せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

再会 ④

春。
彼は帰ってきた。


ちゃんと連絡してきてくれるあたりがまた可愛い。
今回は前とは違う店が良いと言われたので、場所を変えた。
とは言ってもおしゃれな店を知ってるわけでもないし、何が食べたいというわけでもないようなので、芸がないがこれまた同じような価格帯の居酒屋。
店リサーチしとこ…。
時間は前回、前々回と同じく夜の9時あたり。
店は違ったが何故かまたカウンター席に案内され、新鮮みのない配置となった。


例のごとくめちゃめちゃ話した。
熱心に私の話を聞いてくれるし、自分の話もしてくれるし、酒も普通に旨い。
こうしてだらだらしているとあっという間に時間が過ぎた。


また閉店までいようかと思っていたが、ここで問題が発生した。
入り口の扉が開閉するたびに入ってくる風が尋常じゃなく冷たい。
春の夜はまだ冷える。
位置関係の問題で外気の温度を感じやすく、酔って体温が上がってるのもあってか、
落ち着いて座っていられないほど寒かった。
2人して膝にコートをかけて震えていた。


寒すぎるしそろそろ出ようか~、この後どうする?
と私が聞くと
どうしますか?
と聞き返してきた。
自主性はないんか。
なんでも大丈夫っすよ、なんて言って何も提案してこないので
じゃあもう帰る?と意地悪すると、
まだ、帰りたくないです、
とそれだけはっきり意思表示した。
うーん、可愛い。
帰らないならどうするというのか…。
飲みなおしに2件目いくか、カラオケいくか、ネカフェか~、ラブホか?
とふざけると、
なるほど~笑
なんて言って笑うだけでどれがどうとは言わない。
行先を決めてから出ようと思っていたのだが、外と変わらないくらい寒い(と感じた)ので
先に会計を済ませてしまうことにした。


走り出しても目的地がないので、とりあえず二人して自転車を押して歩く。
どこが良いかな?と改めて聞くと、
とにかく温かいところならどこでも…
とだけ言う。
丸投げすんなよ~、私はほんとにどこでもいいから決めてよ~
と私が丸投げしてみると、彼はえー、と心底困ったような顔をして唸った。
「お腹いっぱいなんで、2件目はもう良いかなって思います、だから…カラオケか、ネカフェか……ラブホかですか。」


ラブホなんて自分から言い出すと思ってなかったので目を丸くしてしまった。
私が言ったことの復唱なんだけど。
でも嫌だったらわざわざ言わないよな?
そんなん言われたらラブホになっちゃうけど良いんですか~?笑
と茶化して聞くと、
別に良いですよ。
と控えめに言われた。
「別に良いですよ」…。いや、行きたいんか行きたくないんか!
そんな隙だらけだと悪い人に付け込まれるぞ~
という私の忠告に対しては、
俺も相手は選んでるんで、大丈夫ですよ、
だそうで。


前回も生殺しだったってことで。
もういっちゃっていいんですよね???


俺は全然したくなかったけど無理やり犯されたとか後で言うのやめてね、さすがに萎えるから!、
ということだけ強く主張しておいた。
このまま歩いてたらホテルに到着してしまう。
そんなこと言いません、
と笑いながら、目的地を知らない彼は私の歩調に合わせて歩き続ける。


すいません、やっぱり我慢できませんでした。

再会 ③

帰省するときには必ず連絡するようにと強く念を押した。
そして冬、彼は帰ってきた。


年末。
この日はいろいろありすぎたのでまたいつか書きたいと思うが
彼とはなんにもなかった。
何もしなかったというほうが正しいかもしれない。


前回と同じような時刻に、同じ店に集合し、
多分似たような話をした。
それなりに、というか普通に楽しかった。
下世話な話もしたし、やはりまた私が彼を食いたいとかいう話にもなった。
そして今回に至って彼はどこか乗り気だった。
核心はついてこないし、あくまで冗談の延長、私の戯言にそれらしい相槌を打ってるだけなんだけど。
前よりその気になっている…ような気がした。


こうなってくると後は押すだけだが、
何故何もしなかったかというと、私が生理の初日だったからだ。
必ずするという約束なのであればそれを伝えて日をずらしてもよかったが、
そういう前提はない。
私たちは夜ご飯を食べに来ただけ。
そういうことをするかどうかはルート選択次第だ。


踏み切らなかった1番の理由はそういう事情だ。
踏み切れなったが正しい。
そしてもう一つ、やはり彼女の存在は気がかりだった。
彼女持ちにいい思い出もないし、私のほうから強引にいくのは控えようと考えていた。
向こうに押されたらどうしようもないけどね!()
とはいえ状況が変わってそれ以前の問題になってしまった。


生理だから~なんていうことをあえて言いたくなかったので、
そうならないようにいろいろぼやかして過ごした。
まぁ彼の性格から言って私の誘導なくして自ら仕掛けてくることなんてまずない。
私が食いたいだけだしね!


そうしているうちにやはり閉店の時刻になった。
さすがにこの真冬の極寒の中で朝まで野外にいるわけにもいかない。
というかそういう空気になる前に帰る必要があった。


会計を済ませ店を出ると、小雨が降っていた。
降ってきたし帰るしかないなーと私が言うと、
彼は何か言いたげな顔をしながらも何も言わず自分の自転車に跨った。
店から家はすぐだ。
彼の家がある通りまで向かう途中、
この程度の雨なら気にならないですけどね、
みたいなことを呟いた。
傘がないとどうにこうにもいかないくらいには降ってる。
雨が大丈夫だからどうなのかという話もあるが、言いたいことはそういうことじゃないよな。


名残惜しそう。
何か、今日は何かあると思っていたのだろう。
いや~
悪いことしたとは思うけど…


彼女もいるし!ね!またね!
と分かれ道で言い放ち、半ば逃げ出すくらいの勢いで帰った。
彼の、え~という情けない声を背中で聞きながら。


家に着くと、律儀な後輩からのLINE通知が目に入った。
開くと今日のお礼と、
実はゴム持ってきてたとかいうカミングアウト。
それは…絶対今言うことじゃねぇだろ!
でも言われたら逃げきれてなかったな。
いじらしい。可愛い。
LINEじゃないと思ったことも言葉にできない。
私が押し切らないと動けない。



次は絶対お持ち帰りすると決めた。

再会 ②

会うのは久々だったが、私がネタで言う「後輩くんと寝たい」という発言が人づてに本人に伝わっていた。(そういう内輪ノリ)
彼はそれを普通に面白がってくれていて、やばすぎるな~などと言ってただ笑う。
まぁ私はなりゆきでそういうことになったらラッキーくらいに考えていた。


一緒にご飯を食べるという約束だったが、お互いの予定の関係上集合は夜の9時。
晩御飯には随分遅い時刻だ。
お互いの家の位置関係と、安さだけで適当なチェーンの居酒屋に決めた。


久々に会った彼は想像していたよりも背が高くて、「男の子」という感じがした。
可愛い後輩、というイメージだけでなんとなく小柄だったように錯覚していることがある。
私は一般的な女性の平均身長くらいなので、実際私より低い男の子は周りにはほとんどいないんだけど。
彼においても会わない間に見違えるほど成長したというわけではないだろう。
しかし、こうして改まって彼の横に並ぶという機会もなかったので、特別に感じられたのだと思う。
私服で会うことも多分ほとんどなかったしね。


彼の声や話し方、交わした言葉など、断片的には思い出せるが、
学校以外の場所でこうして二人で会うことなどあるはずもなく
場を持たせられるのだろうか、と直前になって考えたりした。
だが、顔を合わせ、声をかけた瞬間の印象はとても柔らかく、いい意味で普通だった。


予約もせず入店したが席には空きがあったので待つこともなかった。
カウンター席に案内され、横並びで座る。
変に相手の視線を気にしなくて済むし、近くに座れて良いかも、思った。
私は実は軽食を取ってしまっていたが、彼は腹ペコというのでたくさん頼んだ。
彼に食わすつもりが酒を飲むとどうも食欲が増幅してしまい、結局私もよく食べていた。


会わない間の話や共通の知り合いの話をしていたら気づけば閉店時間。
9時集合と言いながらお互い遅れ気味に集まったのだが、それにしても4時間はいたようだ。
帰るのも名残惜しいが、このあと休憩して帰らない?などというムードでもない。
いまいち決め手にかける。
そもそもこんなに久しぶりに会っていきなりそういうことをするのも変な気はした。
帰りがたいが2件目のあてがあるわけでもなく(お腹いっぱいだし酔ってるし)
とりあえず公園にでも向かうかという話になった。


そうして何故か朝の7時あたりまでずっと自転車を漕いで公園を転々とした。
どうしてそうなったのかは二人とも分からないが、どちらも行き先を決めておらず
また私の思い上がりかもしれないが、どちらも何かを期待していたためにこうなったのではないかと思う。
普通に疲れたし、汗もかいた…。
だがそれなりに面白い思い出にはなった。
彼には彼女がいるがまだこのとき童貞だと言う話も聞けた。


私が一歩踏み切れなかった理由としてこれもある。
彼女がいること、
そしてその彼女とまだしていないということ。
私が童貞をもらうのは願ってもないことだが、こんな私にも彼氏がいる。
初めては恋人が良いと思った。
付き合い始めに童貞だった彼が知らぬうちに童貞でなくなっていたなんてことを
もし知ったら一生の傷になるだろう。私は絶対死ぬ。
だから今日はやめておこうと決めた。
彼がどこかで私を誘うようなことを言ってくれば絶対にしてたけど()
彼からそんなことは一切言ってこない。
浮かれポンチの私が勘違いするような発言は飛び出さず、朝になったのだった。


しかし彼は私が誘うようなことを言えば、否定もせずに笑う。
真に受けていないといえばそうかもしれないが、
私には彼が決め手となる一手を待っているようにも感じた。


そうして
次会ったときお前が童貞じゃなかったら絶対ヤる、
と言い残しておいた。(彼女と別れてたら、とかだったかも)


すると彼は、朝日の写真をスマホに納めつつ
覚悟しておきます、
と言って笑った。

再会 ①

彼と私の出会いは高校の部活だった。


後輩として入学してきた彼はすぐにうちの部に入部を決め、
先輩らとも打ち解けて過ごしていた。


自分から前に出てくるタイプではなかったが、
何故かいつも先輩である私たちの代がたむろしているところに居座っていて
にこにこと話を聞いているような男の子だった。
(後で聞くところによると、同級生といるより居心地が良かったらしい。)
ハーレム系のラノベの主人公を思わせる、押しかけに弱そうな雰囲気を持っており、
「敬語で懐いてくれる後輩」という属性もあってか私は彼を割と気に入っていた。


しかし私は全く関係のない事情で高3の春に途中退部をした。
そのときのことを説明しても仕方ないので割愛するが、
そういうことになって、部の後輩に会う機会はほとんどなくなった。
やめてからも部の友達は仲良くしてくれたし、遊びのイベントには呼んでくれたが
後輩との縁はそこでほぼ途絶えた。
かと言ってそれほど惜しむような後輩が大勢いたのかと言われればそういうことはなく、
もう一度話したいと思うのはせいぜい件の彼くらいなものだった。


私が高校を卒業してから1年後、彼は浪人するらしいというような風の噂を耳にした。
そのときには特に彼に思いを馳せるような機会もほぼなくなっていたが
さらに1年後、彼が大学に入学したというのをSNSで知った。
と同時に私がつながっていたSNSのアカウントは高校用のものではなかったということを本当に今更にながら知った。(部活で活躍するにつれてアカウントを増やしたらしい)


特に意図があったわけではないが、私だけがフォローし合ってなかったことを惜しく思い、そのタイミングで思い切ってフォローした。
私がフォローしていた元のアカウント(別の用途で今も使われてはいる)は受験があるのでとほぼ活動がなくなっていたが、
高校用のアカウントを覗いてみればこちらは時期に関係なくずっと動いていたようだ。
彼の所在を知らなかったのはどうやら私だけだったらしい。


そんなこんなで、高校を卒業して2年も経ってから彼と新しいつながりを持った。
彼も私もお互いが意図して離れていたわけではないし、SNSヘビーユーザーであるため、繋がりさえ持てば関わる機会は生まれた。


彼はどうやら地方の大学に進学して、地元を離れ一人暮らしを始めたらしい。
そのため長期休暇にこっちに帰ってくるとなれば、顔を合わせられる日はないかと共通のフォロワーがアポを取る様子が見てとれた。


彼との空白の2年間、乃至私が部活をやめた日から数えると約3年。
その間のことは興味深いし、なにせお気に入りの後輩だ。
私から話して聞かせることは特になかったが、流れに便乗し「一緒にご飯でもどうか」と誘ってみた。
すると、彼はこれをあっさり了承し、
とんとん拍子で彼と夏休みに二人で会うことが決まった。
このときの私の下心は15%くらい。


こうした成り行きで私と彼は再び交わり出したのである。

ひとのもの③

なんやかんやと彼はその気だった。


設けていた保留期間も過ぎ、
結局それは実行に移されることに決定した。


彼自身がしっかりやることをやってくれれば私としては問題ない。
彼女がいる人とするのは初めてだが、
私と同じような価値観であるなら気持ちの面も気にしすぎなくて良いだろう。


何度か彼女に携帯を見られそうになったとか、不審がられている気がするが上手く切り抜けたとかいう話を聞き流して


いよいよ当日となった。



待ち合わせは現地。


自宅から自転車で行ける距離のラブホ。


私は彼氏と以前にも訪れたことがあったのだが、
相手のほうは電車を乗り継がずにラブホに来るのは初めてとのことだった。
人に見られると不都合なので早々に中に入る。
妙な緊張感があって口数が少ない気がした。


とりあえず入室し、息をはく。
彼も息を吐きながらニヤッと笑った。


えーと…


とりあえず風呂入る?


ここからどうしたらいいのかと考え出した私に彼が答えを出してくれた。
なるほど、風呂ね。


彼氏とはまず風呂ということはない。
だいたい一回して、それからお風呂でゆっくりする流れが多い。
しかしまず体の汚れを落とす派も当然いるだろう。(私は風呂に入ってからホテルに行くことが多いのだが。)


一緒に入るか、
と彼がすたすた歩き出したので急いで着いていく。
服を脱ぐタイミングとか裸を見るタイミングとか下着の感想とか
そういうのすっ飛ばした構成なんだなと思いつつ提案に従うことにした。


とはいえ脱衣所では彼は少し脱ぐことを躊躇い、
恥ずかしいな、笑
と笑った。
私も脱衣所で自分で服脱いで見せることになるとは思ってなかったんだよな。


慎重な手つきで彼は下着をおろした。
既に質量を持ち始めていた。
サイズに自信があると聞いていたわりには平均ちょい上くらいの印象だったが、
多分何かしら称賛した覚えはある。
私の体について何か言われたのかは全く覚えてないが、あまり感動はなさそうだった。
女の裸は見慣れてるので仕方ないのだろう。


バスルームに入り、
風呂に湯を張りながら彼が私のことを洗うと言ってきた。
洗いっこじゃんエロ〜と思ったが、
彼はめちゃくちゃ真剣に私の髪を洗ってくれた。
これが彼女とのお決まりコースらしい。
洗い方の良し悪しは私にはよくわからないが、美容師顔負けの頭皮マッサージには脱帽した。
なんやこの健全な癒やしは。
裸同士なこととか忘れるわ。


てっきりこの後体のほうも洗ってくれるのかと思ったら、
自分で洗ったほうがしっくりくるだろう
とかいう反論しづらいことを言われて各自で洗うことになった。
なんなら同様の理由で彼の頭を洗うこともかなわなかった。
そうなってくると1人ずつ入ったら良かったのでは、と思わなくもないのだけど
それは言わないでおこう。


湯船に入ると彼が
こっちおいで、
と引き寄せて後ろから抱きしめてくれた。
そういうことやるタイプなんだ〜へ〜
みたいなことを思ってニヤニヤしてしまう。


彼の手がそっと胸に触れてきて、思わず反応してしまう。
しかし私の様子に満足したのか
攻めはそれほど長くは続かなかった。
それから少し雑談をして風呂を出た。



この後の行為の記憶は曖昧で
特筆するようなことも特にないのだが、


最悪の教訓を残したことだけは確かである。