せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

今日も釣り⑨

ここで買いに出るのも良い思い出になったろうが、そこで冷静になられても怖いと思い

私は鞄に潜ませていたゴムを取り出した。

ラブホで使わなかった残骸である。

これを取り出して来れるのも私達のよく分からない関係ならではだ。


先輩は私がゴムを持ってたことに心底驚いていたが、騒いでいたのも一瞬だった。

じゃあ、使わせてもらうな、

と開封するところをついいつもの癖でじっと見てたら

恥ずかしいから見たらだめ

と言われた。

付けてるところは見せない、見ないのが美徳だと何かで読んだことがある気がする。

私はこれまで付けて、と言われるか、進んでリードするかが多かったので若干カルチャーショックだったのだが。


そうやって先輩は準備を終えて、私を寝かし直して

ふぅ、と息を吐いた。


先輩はどんな気持ちなんだろうか。

男だし馬鹿になってるんだろうか。

私は変じゃないだろうか。


いろんなことを考えそうになってはやめた。

今更冷静になっても遅い。

ちなみに私は馬鹿になっていた。


先輩のは特別大きいとか長いとかそんな感じではない。

極めて平均的。もしかするとそれよりも小さめかもしれない。

しかし身体能力、空間認識能力が極めて高い。

同じ律動を繰り返せること、いろいろな体位に対応できること、狙ったとこに当てられること

セックスの基本を叩き込まれてる動きだった。

大事なのはサイズじゃねぇんだなぁ!


先輩はさほど口数の多いタイプではなかった。

変な言葉責めもないし、愛でてくれるわけでもない。

ただときどき、

どうされるのがいい?これ?

と囁かれたりするだけで頭が溶ける。


また先輩自体はこっちの責めを全く欲していないタイプだった(実際のところは分からないけども)。

何かしようとしたら止められるし、若干嫌がってる様子すらある。

先輩は楽しいのだろうか、良くなってくれてるのだろうかとだんだん不安になってきた。

私ばかり舞い上がってるんじゃないかと思って、

気持ち良いですか…?と聞くと

良いよ、何回も出そうになってる、

と苦笑したので、余計に興奮してしまった。

ふたりとも気持ち良いということがめちゃめちゃ大事だ。


先輩には噛み癖があって、

首や肩に甘噛みしてきた(ちょっと強いときもあった)。

この癖は実は彼女から聞いたことがあったので、これのことかぁ!と感動したのだった。

ハイになってて罪悪感も何もなかったのである。

完全にアホ。


甘い言葉を吐いてくれるわけでもないが

なんとなく大事にされてる気のするセックス。

後半はほんとに我慢するのが大変そうで、

それでもなんとか長く楽しめるように耐えてくれた。

そんな様子も楽しかった。

正直に言って、最近で一番良かった。


こんなことになって後悔も何もないのはほんとにクソ女に成り下がったなという感じだが

今思えば今更だよな。

開き直るわけではないが、彼女持ちや友達の元カレと寝るなんて今に始まったことではない。


そうはいってもやっぱりクソだよな。

何かが胸に引っかかっていたのか、

なんとなく、キスはできなかった。

今日も釣り⑧

本当に調子の良いことだけ言って、この日もぎりぎりまで帰る雰囲気だったので半信半疑だったが
確かに着替えは持ってきていた。
次の日の仕事着と、寝るときの部屋着。
こんなに準備して逆に帰るというのはなんなのか。
先輩も恥ずかしくて保険をかけていたのか、もしくは本当に途中で面倒になったか。
体調が悪いのはうそぽかったけど。


今回は先輩が次の日仕事で私が休みという日だったので、
早々にご飯を食べて寝る支度をしような、と話していた。
にもかかわらず、わざわざお手製飯を作ってくれるもんだから食べ始めも遅くなって、結局寝るのは2時前だった。
ちなみに先輩の作るご飯はめちゃめちゃ美味しかった。
手際も良いし、とにかく美味い。
あと、都度片づけつつ食器を洗いつつ進めていくので、後片付けも気づけば終わっていた。
職場で先輩が台の上を片付けながら作業をするのを思い出した。
ほんとスパダリって感じだった。


そのあとつまみを食べてのんびりはしたが、わりかしテキパキ寝る準備をしたように思う。
前来た時ほど先輩は大騒ぎしてなかったし、寝るときも甘々の空気に胸焼けして寝られない!という感じでもなかった。
ただ私が背を向けて寝ようとすると、
そっち向いて寝るの?それでいいの?
と煽ってくるので、誘惑に負けて先輩に張り付いて眠ることにした。
体温と体勢で安眠できない問題は解決したわけではなく、やはり寝づらくはあったが、
お互い、なんとなく分かってきて、うまい具合に寝られる姿勢を見つけてやり過ごした。


この日は案外話もそこそこに眠る姿勢をとり、結局熟睡とは程遠い質の悪い眠りと目覚めを交互に繰り返していると気づけば明るくなっていた。
先輩が途中で覚醒して、もう全く眠れないのに目を閉じて寝ころんでいるという状態が始まり、それに気づいてまた私も覚醒した。
この日も先輩は私をあやすようにとんとんしたり撫でたりしてくれていたのだが、
絡めた脚の付け根をさすってくるのが妙に扇情的で、またしても私は変な気持ちになってきた。
朝ってなんかむらむらするよね~。


先輩は先輩でわざとなのか、前回私が、変な気分になるからやめろ、と言った撫で方を忠実に再現し始めた。
これを皮切りにおっぱじめようなんていう意図を全く感じとれなかったので、
先輩が結局どんな気持ちでこれをしていて、私が無感無反応を貫いたら未来がどう変わったのかは今は知る由もない。
なぜならやはり感じてしまったからである。
この不浄な体は、異性の指先を無視することなどできなかった。無念。
今回もまた脇腹背中責めが始まるのかと思いながら、前回同様「やめてください」なんて心にもないことを訴えたのだが、
そうこうしているうちに先輩の手が、私のゆるゆる寝間着ズボンをすーっとこじ開け、下腹に触れた。
頭が悪いと思われるだろうが、これにはさすがに驚いた。
いや遅かれ早かれそうなるだろと、冷静にこれを読めば思うだろうが
今までの積み重ねと先輩への解釈で、なんやかんや直接的なことはしないだろうと考えていたのである。
それがどうか、今先輩の手は下着をやんわりなぞっている。


先輩の手がそんなところに…!


なんかえっちな漫画でありそうなセリフをリアルに思い浮かべていた。
先輩の細い指が私のあんなとこに触れとる。やばい。


先輩は焦る私を見て面白がっていて、随分余裕に見えた。
全く性急さはなく、焦らしと呼べる程、明らかなゴールも見えず、ただ少しずつ侵入されていく感覚。
あわあわ言ってるうちに先輩の手は下着もすり抜け、直接皮膚に触れてしまった。


先輩に私の触らせちゃった…。


このときはまだやっちまった感はなく、ただ驚きと興奮だった。
先輩の指が確実にそこを捉えて、優しく、激しく、責め立ててくる。
私の様子を確認しながら、動きを少し変えたりして。


気持ちいい、と伝えると
気持ちいい?良かった。
と小さく笑うだけだった。


変に言葉をかけてくることもしない。
その余裕さだけが少し癪だった。


結局あっけなくいかされたのだが、先輩は責めの手を緩めなかった。
少しずつ言葉も増えて来て、
どうされるのが良い?
指増やしてみよっか、
こっちはどうかな?
なんて囁かれるだけで体がより熱くなるのを感じた。
先輩が、私に触ってる…。


別にエロいことがしたかったわけじゃないし、こうされることを望んでいたわけでもないが
いざこうなってみると、先輩も男性だったのだな、と改めて実感した。
結局欲情するじゃないか、ということではない。
正直このときまだ、先輩が私に欲情しているかはよく分からなかった。
ただ一方的に責められているだけだし、大きな奉仕精神の可能性も全然ある。
ただこういうところをこうして、こうすればこうなる、と分かってそうやってくることで先輩の経験的なものを感じて、
先輩も1人の男性だったのだ、と強烈に体感させられたのである。


結局中も外もとろとろにされて、汗だくになるまで責めの手は続いた。
最近こうなっても相手は臨戦態勢ですらない、もしくは何も私には求めない、という人にあたりやすかったので自分の中で禁句になりつつあったのだが、思わず
私ばっかり嫌です、私にもさせてください
と伝えてみた。しかし
気にしなくていいよ、
と言われ触らせてもらえなかった。


そのあともしばらく私だけずぶずぶにされていたのだが
無理に触ってもしなんともなってなかったら…と思うと怖くて責めに回ることができずにいた。
息も絶え絶えにどかっと倒れこみ、先輩も疲れただろうし、このへんで終わりかな…
と思っていると先輩が私にのしかかってきた。
脚の間に割って入ってきて、体を押し付けられた。


硬い。


硬いものがあった。
自分の心臓が早くなるのを感じた。


すごい、かたいの当たってるんですけど、
と伝えると
そう、その気になってるってこと。どうする?
と言われた。
どうする????どうしよ???????


いやさすがに…と社交辞令を言う間もなく、
先輩はそのまま腰をゆるゆる動かし始めた。
待ってこれやばい…!


そこからは先輩はやりたい放題で、
どうする?といちいち疑問を投げかけてきながら、
私の片脚を持ち上げてこすりつけてきたり、
そっと体制を変え、後ろから私の腕を引いて揺さぶってきたり
うつぶせに寝かせて押し付けてきたりした。


疑似セックスやめてほんとに。
先輩てこんなにえろかったんやと軽く感動したほどだった。


どうする?
なんて言いながら拒否権はなかった。
さすがに、最後まではやばいかも、と極めて微力な抵抗をしてみたものの
何を言ってるんや今更、と笑われてしまった。
いや、確かにそう。今更すぎ。
ここまでしてもらって、しておいて、入れるのはだめなんてことあるわけない。
でもさ、そこまでしたらもう本当に取り返しがつかない…
ほんのわずかに残った理性と対話していたのだが、
先輩が私の両腕を頭の上で固定し、そのまま腰をゆっくり振り始めたところで
そのバランス感覚の良さに興奮して、もういろいろどうでもよくなってしまった。
無理だ、我慢できない。


もう我慢できないです。
そう訴えかけると、
分かった、でも俺何ももってきてないから、買いに行かないとな
と先輩は優しい声で言った。

今日も釣り⑦

その日は先輩に車で職場まで送ってもらった。
そして帰りは先輩が迎えに来て、そのあと2時間弱散歩して帰った。


先輩はいろんなところへ連れていってくれる。
外遊びやらドライブが好きな先輩はここらへんのことには特に詳しいのだ。
その日は夜に人のいない観光地を練り歩いて、竹林を抜けて、山に登って、夜景を見て、ラーメンを食べて解散した。
こんな過ごし方ができるだけでも越してきた甲斐があるというものだ。


見せたいもの、連れていきたい場所がたくさんあると先輩は言ってくれた。
私とならきっと楽しいだろうと。
行く先に私がいればそれはどんなに良いだろうと。


結局どういう意味だったのだろう。



その次の日もなんなら家に来ると言っていたが、何かしらの理由をつけてこなかった。
着替えを持ってきてないとかなんかそんなことだった。
そもそもそんな頻度でうちに来るのも変だし、来てくれるという期待をしているのもおかしいのだが、
私はすっかりその気になっていたので、無性に恥をかいたような気持ちになった。
今日の夜はてっきり一緒だと思ってたのに。
曖昧な口約束しか交わせず、あっけなく破られても怒ることもできず、素直に欲求をぶつけて甘えることも許されない
そんな何者にもなれない立場に自分がいるのだという現実を目の当たりにして、
心底嫌気がさした。


その次の日は約束こそしてなかったが、
家に行くつもりで準備してきたけど体調がなんとなく悪いから帰ろうかな、
とわざわざ言いに来た。
来ないならいうなというのもあるが、なんでそんな気を持たすようなことをして、私をキープするのだろうとなんだかイライラしてきた。
何故気のあるようなセリフをわざわざ言うのだろう。
ここまできてもまだ無邪気という言葉で済まされるものなのだろうか。
自分が何にイライラしてるのかもよく分からなかったが、とにかくまた振り回されるのは嫌だと思い、先輩を煽ってみた。


そんなこと言ってまた来ないんですね?
わざわざそんなことだけ言いにきて結局来ないんですよね?
あーあ、良いですよ別に来る気がないなら。その日の気分で調子良いことばっか言って。
ほんとやだな私だけその気になって。これだからチャラい男は嫌いなんですよ。


こういう言い方をすれば先輩はムキになるし、見栄をはるし、天邪鬼になるのを本当は分かっていた。
先輩は家に来た。

今日も釣り⑥

朝7時頃、日の光で完全に覚醒した先輩はただ寝ころんでるだけだった。
先輩が昼まで寝てたなんて話をほとんど聞かないので、
夜更かしをしても朝には目が覚めてしまうタイプの人間なのだろう。
私はというと、寝られなかった分は昼だろうと夕方だろうと寝て取り返すタイプなのだが、
ばっちり目覚めて私を撫でている先輩を見て、私まで覚醒してしまった。


仕事は昼からなので起きるにはまだ早いし、もう少し体を休めていたい。
とにかく目をつぶって寝直そうとする私を先輩はひたすら優しくなでていた。
いやらしい手つきではない。興奮させるような意図もない。それが感じ取れるほど優しい。
布団に潜り込んできた猫にそうするように、寝つきの悪い妹あやすように、
私をそっと撫でたり、ぽんぽんと宥めたりした。
だが、肩口や腰のあたりもそうやって撫でるので、私はだんだん熱くなってきて、
落ち着いて寝られる精神状況じゃなくなってきた。
要は私が先に発情してしまった。


何も考えず無心になろうと意識を手放そうとしたが、
先輩の指先に気を取られてどうにも思うようにいかない。
文字に起こすと先輩がわざとやって煽っていたように見えるが、本当にそんなことはなかったのだと思う。
ただ手癖なのかなんなのか、神経を指先ですーっとなぞったり、腰をさすったりするもんだから、落ち着いていられなかった。


あんまりにも続くので、思わず先輩に
それ、弱いのでやめてもらえませんか……
と声をかけた。
ん?何が弱い?
と全く分かっていないような返答をしながらも先輩はやめなかった。
むしろ逆にエスカレートした。
この人あれだ、やめてって言ったら絶対やめないタイプのSだ。


さっきまでは無意識にやっていたようなことを、今度は意図をもってわざとやり始めた。
腰や背中を指先でくすぐったり、優しく撫でまわしたり。
今度は確実にいやらしい動きだった。
自分がどんどん発熱するのが分かった。
普段ならこのまま成り行きに任せていくとこまでいくのだが、相手は先輩だ。
どうなっても良いとは思ってたが本当にどうにかなったらさすがにまずいんじゃないか?
明日どんな顔で仕事に行くんだ?
本当に今更だが、このまま性的なことに突入するのは良くない気がしてきた。
だが、頭でどれだけ理性的なことを思っても体が全然いうことを聞いてない。
全く嫌がってない。
やめてやめてと言いながら逃げもしない。
先輩を押しのけて布団から出れば良いだけのことなのだが、そうしなかった。
息も上がってきて、声も上ずって、体がどんどん敏感になる。


これ、もう前戯ですよね…?
私がおどけて聞くと
これは前戯だね
と先輩は笑った。


そうしているうちに目覚まし時計が鳴って、
強制終了となった。

今日も釣り⑤

その日は結局、ほぼ一睡もできず、ただ先輩に愛でられて、気づいたら明るくなっていた。


手に触れ、肩を抱いて、顔をすり寄せて、そうやって甘ったるくじゃれているだけで朝になったのである。
ただただ緊張して、どきどきして、頭がいっぱいいっぱいで、
胸やけしそうなほど甘い夜だった。


先輩はというと、私が寝ないので先輩も全く眠っている様子がなく、
おそらく1ミリも休まっていないと思うのだが、そのような素振りも見せず、元気に朝を迎えていた。
もしかすると、先輩自身も予想外の展開にハイになっていたのかもしれない。


こういったことがあっても、その日は予定通り早朝から出かけて山遊びにいそしんでいたのだが、
さすがに距離感はほんの少し変わって思えた。
先輩からのスキンシップや、LINEが増えた気がしたし、仕事で顔を合わせたら妙に近づいてくるようになった。
逆に私は意識しすぎて変にすました態度しかとれなくなった。


そんな日々が続き、休みでは飽き足らず、仕事のあとに会おうなんて言ってるときに
ひょんなことからうちに来るという話が出た。
どういう流れだったかあまり覚えていない。
ただどちらともなくそういう話になったような気がする。


少なからず私は家に来てほしいなぁとぼんやり思っていた。
人に依存すると夜が急に空しく退屈になるものだ。
下心は正直ほとんどなかったが、添い寝はしてほしかったし、そのあと何か間違いがあってもそれはそれで良いような気がしていた。
それに前回のことを思えば、先輩は女が横で寝てるからといって、欲情したりしないのかもしれない、もしくはそうじゃない楽しみ方を知ってるのかもしれない
そんな風に思っていた。
先輩は自称硬派で、これまで多くの女性とお付き合いの経験はあって、それなりに女性の扱いも分かるけれども、不貞な行為に及んだことはないと話していた。
こうなっている今、何が不貞で何が硬派かよくは分からんが、要は付き合ってない女とセックスしたことはないみたいな話だろう。
私は見る目が壊滅的にないので、それが事実か否か見極められないが、あの夜のことを思えば、あるいはそうなのかもしれないと逆に思い始めていた。


これは信頼とかではなくて、先輩はそういう人間なのかもしれないなという解釈に過ぎない。
結局そんなことはどっちでもいいのである。


なんやかんやあって、うちに来ることになった。
ただ問答をして話をしてるうちにそういうことになったのだが、
あんなに軽口を叩きながらも先輩は私の家に足を踏み入れるのには若干の躊躇いがあったようで、
それだけはする気がなかった、本当に行くことになろうとは、などと直前までぶつぶつ言っていた。
それが何由来の躊躇だったのか、結局よくは分からない。
さすがに彼女を思ったのか、ここが不貞行為のラインだったのか。
無理に来る必要はないのだが、そういう言い方をすると、いや無理してない、悪いことはしてない、と話を逸らすのが先輩である。
結局上手いこと丸め込んでうちへ連れてきた。


家に来て、やはり変なテンションになった先輩は、またしても寝る気あるのかというほどはしゃいでいたが、そのうちおとなしくなった。
うちには遊べるようなものもテレビもないので案外暇だったらしい。
結局次の日私は仕事だったので、眠らせてもらうことにした。


普段私は6帖ほどしかない部屋に直置きしたシングルサイズのマットレスで寝ている。
人が来た時にはさすがに狭いので大抵そのマットレスに客を寝かして私はカーペットで寝た。
もしくはカーペットで並んで雑魚寝。
しかし先輩はさっさとマットレスに寝転がって手招きした。
狭くないですか?と抵抗したが
狭いほうが良くない?と言うので、
まぁ確かにと思って隣に失礼した。


めちゃめちゃ仲の良い友人でも狭いサイズだ。
そんなとこで先輩を寝かすのがまず申し訳なかった。
しかし先輩は早速私を腕の中へ引き寄せ、耳元に顔を寄せた。
まさかまたこうなるとは。いやなるか。
先輩はやっぱりハイな状態で、やけに騒々しく話をしたりふざけたりしていた。
しかし私が本気で寝ようという態度を見せたので少しずつ静かになった。


これはお互いそうだったと思うのだが、冷静になるとめちゃくちゃ寝づらかった。
まず空調がくそ過ぎてすごく暑い。私の睡眠時の体温が高すぎるためかもしれない。
しかも先輩が寒がりですこぶる相性が悪い。
私は暑がって布団も被らなかったが、先輩はタオルケットと羽毛布団を重ねて首まで被っていた。
しかし密着している私が異様に発熱するため、接着面だけ体温が上がり、寝苦しかったという。
そもそもだが、腕枕とはかなり厳しい体勢だ。
下敷きにしてる腕が気になって眠れやしない。
先輩は先輩でそういうときにやたら見栄をはるので、全く微動だにしない。
だが休まらず、眠りにもつけていないことは事実だった。
緊張と興奮で寝られないというのももちろんそうなのだが、そもそも安眠できる環境ではなかった。
先輩に悪いことをした。


そんなこんなでも結局密着したままだらだら朝になった。
何度か気絶するように眠りはしたものの、浅い淵を彷徨ってるだけで、どちらも相手の挙動で目が覚める。
何時間寝られたのか分からないが、まるで休まらないまま明るくなっていた。