せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

再会 ⑤

私が誘いだしておいてこんなことをいうのも失礼とは思うが、
彼は責任逃れをする節がある。
高校の頃にも何度かそういう場面を見た。
押しに弱く、主体性がない。
流され、なるようになってただ過ごしている。
だからいざ責任を追及されたとき、俺が決めたんじゃない、俺が言ったんじゃないという。
責任逃れというか、本当にそう思っているのかもしれない。


彼のその性格を非難する気は今更ない。
彼女ともそういった成り行きで付き合ってると言い放ったので踏み切ったというのもあるからだ。
だが、いざやることやって、俺はその気なかったのに~と言われたら堪ったもんじゃない。
それに私ががっついてきたから後に引けなくなってるとかだったら多分上手くいかない。
ホテルに連れ込むのは簡単だがそこで恥をかくのは避けたかった。


飲み物を買いにコンビニを経由する最中に、
したいって思ってくれてるってことで良い?
と聞いた。
すると、
多分、大丈夫です…自分でもよく分からない
なんて言い出した。
ダメだ、あんまり攻めすぎると交わされる。
もう押し切るしかない。


コンビニを出て、自転車に乗りなおし
じゃ~ラブホで良いですか~?
と聞くと
いっすよ!
とラーメンでも行くんかという軽快な返事。
もう二人ともテンションの持って行き場が分からなくなってるのだろう。


何度か利用したことのある一番近いホテルに到着した。
聞くところによればラブホは初めてらしい。
まぁ下宿だからおうちでヤれば良いもんな。
しばらく改装工事をしていたようだったが、晴れてリニューアルオープンし、外装から変わっていた。
何やら名前も若干違う。
部屋を選ぶタッチパネルもデジタル画面になっていて、前はボタンを押すと受付の人が鍵を出してくれたが、今回は機械からルームカードが出てきた。
以前を知らない彼とこの興奮を共有できないのだけが惜しい。
エレベーターだけ何故か古いままでガタガタと大層な音を立てているところも含めて楽しかった。


部屋はすべての部屋を知ってるわけではないのでなんとも言えないが、
これまで利用した部屋よりずっとクリーンな印象に変わっていた。
ラブホらしいけばい壁紙は、単色の地味なものになっており、ソファなども含めて普通の部屋のようだ。
ビジネスホテルとして一般客が利用できるように改装したのだろうか。
質素な部屋に構える真っ白いキングサイズのベッドだけがラブホテルとしてのアイデンティティを保っていた。


私もホテルではしゃぐタイプだが、彼も楽しそうだった。
部屋に着くとすぐ風呂やらトイレやらを見て回る私なのだが、
それに着いてきて一緒にうろうろする男は彼氏以外にはこの後輩くんだけだ。
だがいつまでも歩きまわってるわけにはいかない。


彼は何気なくベッドに座った。
私もあとに続いたが、どうしていいか分からない。
部屋を暗くしようと思ったが、つまみが多すぎてめちゃめちゃ消して付けまくってしまった。
彼はそのつまみが枕元に並んでる様子も面白いらしく、私がくるくる回すのを観察したり、自分も触ってみたりしている。


だいたい男の子のほうが逸る気持ちを抑えられず、私がそうやって気を散らしていると強引に襲いかかってくるような覚えがあるが、
彼は今気が散っている。
襲いかかるのは私の役目なのだ。
情けない先輩とラブホに行ったときに、素面でこういう展開になったことがないから、どうして良いか分からないと言われたことがある。
私は逆に酒の勢い任せで、とか泥酔していて記憶がなくて、とかそういう経験がないが、
ここまで私が100%リードするという経験はない。
確かにどうして良いか分からない。
私も同じく情けない女です…


期待しまくってて爆発しちゃいそう!なんて様子は彼にはなく、
ただ好奇心でうきうきしてるが半分、今からどうしていいか全く分からないが半分という感じだろう。
興奮しているのかすら怪しい。
これはまず雰囲気を作るところから…。


照明を見るのもやめてじっと固まっている彼に腕を絡め、密着してみた。
彼は何も言わない。
本当にしていいの?確認しとかないと強姦になっちゃうでしょ、
笑い交じりに聞くと、
そんなことはないです、大丈夫ですよ
と笑われた。
今はどんな気分?と聞いたら
ちょっと面白い状況だなーと思います、との返事。


分かる、面白い。
だって部活の先輩後輩だもんね、私たち。
付き合ってもないし好きあってもないもんね。
冗談で言ってたことが実現して、今二人でホテルのベッドで寄り添ってる。
意味わかんないよね~。


でも意味わかんね~おもろ!と思ってるうちは勃つもんも勃たない。
面白いじゃなくて、先輩に犯されるという非日常を楽しんでもらわないといけない。


よ~し頑張るぞ~

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