せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

今日も釣り①

職場の先輩と寝てしまった。



そんなつもりなかった、ほど説得力がなく、想像力のない言い訳はこの世にないと思うのだが、
それを心の底から思う日が来るとは思わなかった。



今の仕事について1年と半年。
職場の人たちともなんとなく打ち解け、休みの日に遊びに行くようなことも増えた。
これまでずっと実家から2時間くらいかけて通勤していたわけだが
つい数か月ほど前に勤務先の近所に越してきて時間ができたこともきっかけかもしれない。
また彼氏と別れて暇になった、というのも少なからずあるだろう。


仲良くしてもらってるスタッフの中でもとりわけ気の合う男の先輩がいる。
担当している仕事も近しいので話す機会も多く、感覚も近かかったし
よくよく話してみると趣味も似てることが分かってかなり盛り上がった。


その先輩は私がここで働き始める少し前から同じ店舗内のスタッフと付き合っており、
入社直後からそれは知らされていた。
そのころには私にも彼がいたし、そもそも人のものに全く興味なんてないので、
本当にただ、優しい先輩というだけだった。
またしばらくは休みの日に出かけようなんていう発想もなく、ただ店で顔を合わせるだけだったのだが
向こうの熱烈な誘いで、一緒にアウトドアな趣味に興じることになる。


熱烈な誘いで、なんていうと怒られるかもしれない。
その話題が出たときに、面白そうですね、私もやってみたいです、なんて適当な相槌を打っていたために、
私がめちゃくちゃ興味を持っている、ということになって、決行の運びとなったためだ。
実際興味はあったし、やってみたさはあったんだけども、先輩のその熱には遠く及ばない。


彼女もどうやらその趣味には付き合わされているらしく、
休みの日には何かにつけて出かけることになるらしかった。
彼女ももちろん楽しんでいる側面はあるのだろうが、やはり先輩の押しの強さゆえなので、付き合わされている感は否めない。


最初は3人で行くという約束にしていた。
3人でできることなのだから3人でやればいいし、先輩と2人で出かけるつもりもなかったので至極当然のことだ。
だが、店の人員体制上、好きなタイミングで3人同時に休みを取るのは思った以上に困難だった。
その予定が持ち上がったときから、2,3か月、店長が頭を抱えて作ったシフトを3人で眺めていたが、
3人休みが重なるなんていう奇跡は起こらなかった。


先輩は焦れていた。
行くには良い時期があるらしく(よく聞けば都合が悪いのは冬くらいらしいが)3人での休みを待っていては時期を逃すというようなことを言い出した。
3人重なることはなくとも2人重なることはある。
彼女のおる男と二人で出かけてええんかいなとしばらく悩んだが、
彼女が思いがけずあっさり了承し、むしろ背中を押してくれたので、行ってみることにした。


その後何度かその趣味に興じて、朝から晩まで遊んでいたのだが、
それ以外にもやりたいことや行きたい場所が出てきた。
山に一日こもってるのと、ドライブをするのは違う。
オシャレなカフェや景色の良いところにくり出すのも違う。
違うということは私にもわかる。
だってそうなってくるとデートやん。


でも先輩も彼女も別に構わないと言った。
2人でそういったところに出かけて来ても良いらしい。
私はかなりやきもち焼きなのでその感覚が全く分からないのだが、2人が良いならもう良いやと思い、出かけることにした。
2人で出かけること自体が合法化したのだ。


そこから何度も先輩とは出かけた。
OKを出した彼女も、まさか休みが重なる度にそういったことになるなんて予想せずに
軽い寛容な気持ちで了承したのだろうし、
毎度、どこどこ行ってきました~!なんて報告を入れる無神経をやれる自信もなかったため、
事前に伝えて許可をとる、なんていうことをだんだんしなくなっていった。
本当は後ろめたさも少しあったのだと思う。
私は先輩に恋愛感情はなかったし、先輩もそうだろうとは思うけど、
これは明らかにデートで、明らかにお互いなんらかの好意はあった。
当然やらしいことやら浮気な出来事は起こらなかったしその気にもならなかったけど、
彼女が仕事に行ってるその日に、彼女の及び知らないところで、朝から晩まで遊びまわって、楽しく過ごしているということになんとなく申し訳なさを感じた。
気にする必要はない、何も悪いことはしてないといつも言い切る先輩も
彼女に休みの日何をしていたか聞かれてはっきり答えないようになっていた。
先輩も馬鹿じゃないから、そのまま伝えることで具合の悪いことが出てくる可能性を感じていたのだろう。


一方で私は馬鹿なので、恋愛感情こそないが、このままいけば先輩を好きになるんじゃないかという気がしていた。
私に限ったことなのか統計をとったこともないので分からないが、
やはり隣の席の異性とは急接近するし部活の先輩はかっこいいし近所のあいつは気になるもんだ。
それと同じで、いつしか毎日LINEをして、シフトが出るたび2人の休みを確認して、どこ行こうかなんてきゃっきゃしてるうちに、
なんとなくただの先輩ではなく思えてきた。
彼女と別れてほしいとか、自分が付き合えたら良いのに!とかそんな明確な気持ちはこれっぽちもなかったが、
先輩の優しさやら、言葉やら、過ごした時間やらをぼんやり考えていると、
これが積もれば、気持ちもより重くなっていくだろうということをなんとなく感じていた。


しかしそんな気はなかったのである。

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