せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

今日も釣り②

余談か本題か
先輩と彼女は上手くいっていない。


先輩はかなり怒りの沸点の低い人で、彼女さんの少し抜けたところがどうにも気に食わないらしく、店でも雰囲気を損ねるくらい喧嘩をしていた。
先輩の口調が妙に説教じみており、彼女の言い分を聞き入れないもんだから、
そのうちモラハラ男だなんだと陰では言われていた。
彼女の天然ぽいところは、可愛くもあるが察しの悪さでもあって、それを寛容に受け止められないとなると相性は最悪だろう。
そんな2人がなんで付き合い出したかと言えば、それこそ休みの日に2人で出かけるようになって、彼女が猛アタックしたからだそうだ。
実際は、彼女は先輩が自分に好意を持っていると確信して、告白をしたそうだが、
先輩にはそんな気さらさらなく、何度断っても粘ってくるのでお付き合いしてみることにしたという。
とはいえそれは先輩から聞いた話なので実際のところどうだったのか分からない。
彼女がいうには先輩は最初はすごく優しかったらしいし、いざ付き合うと親に合わせたりいちゃいちゃしたりもしてたそうだから、
成り行きで付き合って感情もないまま過ごしてるわけではないのだろう。
ただ、コミュニケーションが上手くいかず、お互い不満を強く抱えていて、
しかしもう話し合う気もなくて、自然と距離があいてしまっているというのは確からしかった。


私は恋愛話が好きなのもあったし、自分の立ち位置を明らかにしたくて
よく先輩に彼女のことを聞いたのだが、決まって悪口しか出てこない。
話していてもつまらない、付き合いきれない、人間性が受け入れられない
などおよそ彼女の話とは思えないような壮絶さで、フォローも追いつかないほどだ。
これが友達の話なら、さっさと別れなよ、なんで付き合ってんの?とはっきり言えたが
こういった話をするようになったときには、私と先輩は2人で出かけるようになっていたし、微妙な間柄だった。
そんな状態の私がいう「早く別れなよ」には、ただ相性の悪い女に時間を浪費するなという意味合いとは別の意図が内包されてしまう気がして、言えなかった。


実際別に別れてほしいなんて思ってない。
ただその話を聞いて純粋にそう感じるだけだ。
だけど別れても本当にそのままただの先輩か?と言われるとそうは言い切れなくて
そんな煮え切らない気持ちで別れたら?なんて軽はずみには言えなかった。
しかし、先輩はそのうち、自分はもはやフリーみたいなもんだと言い始めた。
あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて腹も立たん最低なセリフだけど、
ようは彼女とは全く会ってもなくて連絡もとってなくて寂しいということだったのだと思う。
彼女は毎休み腹痛か頭痛をおこして家に引きこもってるらしく外で走り回りたい先輩とはなかなかゆっくり過ごせてなかった。
LINEもほとんどしてないと彼女も言っており、2人にとっての付き合う形がなんなのか私には分からなかったが、2人にとってもそれはベストではないようだった。
ただもう疲れてしまっていて、努力したりすり合わせたりする気も起きない状態。


先輩は寂しくて、多少投げやりになって、責任転嫁をしているのだ。
自分に構ってくれない彼女に対して拗ねているだけ。
そう思うと、微笑ましく、何も大したことないじゃないかと思う反面、
じゃあ私は当て馬か、と少し胸にもやがかかった。


それからしばらく同じような話をすることが何度かあったが、あまりにも悪口しか言わないので、本当に愛はないのだなという気がしてきた。
しかし関係を切りたいと思っているだの相性が悪いだの、このまま続ける未来は見えないだの言っても
結局のところ別れないのだ。
別れ話とは精神力もいるしストレスもかかる。
何かを爆発させたついでにそれを着火剤にするのが一番てっとり早いが
こういった特に何もないがもう何もしたくない、みたいな状態は着火剤にはならない。
人は静かな水面には波を立てたくないもので、お互いが身動きを取らず、じっとしてることでやり過ごしてしまう。
先輩も彼女もそうだ。
お互い、相手が悪いと確信している。相手が変わることを望んでる。
相手が変われば一緒にいてやっても良いけど、みたいな気持ちがあるのだろう。
何も全てを嫌いなわけじゃない。
すごく分かるし、好きにしてくれたらいいし、早いこと別れを決断することが2人の幸せとも別に思わない。
けど私はそこに居合わせるのがだんだんしんどくなってきた。


何故割り切って後輩として過ごせないのか?
何故先輩は私に自分は独り身だというのか?
何故私はこんなにもやもやするのか?


これが好きということなのか、と知覚して、受け入れられるほど
馬鹿になり切れないまま時間だけが過ぎた。

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