せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

性欲の謎②

この日はなんやかんやで朝の10時ごろまで話し込んでいたが、じわじわと話題も尽きて解散となった。


M先輩の食いつきがすごかったのもあって、他の先輩にも2人変なことしないでよ〜などとイジられたりしたが
(本当に失礼な話だが)私はどっちでもいいなというレベルだった。
先輩を釣れたという感覚はあってちょっとした優越感を抱いたが
M先輩はタイプでもないしそもそもその飲みの席以前はそれほど話をした記憶もなかった。
場のノリでふざけ合っていただけとも取れるし、あまり深く考えないでおこう、
誘われたらそのときはそのときで…
とひとまず冷静になって家に帰った。


その後、主催してくれた先輩にその日のお礼のLINEを送った。
また遊ぼうね〜という内容に加えて
Mがすごく乗り気になっているということを聞かされた。
私と友人が帰ったあと先輩たちはまた他の場所に向かったらしいのだが、その間もずっと私の話をしていたらしい。
おそらくM先輩は飢えていて、すごく都合の良いカモを見つけたと喜んでいるのだろう。


主催してくれたその先輩とは以前に関係を持ったことがあった。
それも一度きりだしセフレになったというような認識もこちらはなかったのだが
先輩はやたらとMと関係を持たないように私を牽制した。
私は先輩の中の都合の良い女リストに名を馳せているのかもしれない。
あまり興味のない話だった。
しかしその先輩はすごくおしゃべりだし、M先輩と関係を持ったとしてそれをひろめられるのは面倒だと感じたので
適当にその気がないような受け答えをしておいた。


そもそもM先輩からなにかアプローチがあったわけでもないのになぜ外野はこんなに盛り上がっているんだ。
私も、もしかしてという気持ちこそあれそれほど楽しみでもないのでそんなことに頭を使うのも無駄な感じがした。


しかし、そのすぐあとくらいに
M先輩からインスタのフォローリクエストが来た。
その他にもいつのツイートか分からないようなものにいいねが、それも一日ひとつくらいの割合で来るようになったりして
何かこれまでと違うような気がした。
これは明らかに私を意識してる、
何様か分からないが私はそんな風に解釈した。


結果としてその解釈は間違っていなかった。
M先輩からLINEがきた。


もう我慢できません、今日の夜あいてる?


ついに来たか〜
という気持ちだった。
やっぱりみすみす逃したりしないよね、こんなカモを。
何度考えてもM先輩は特にタイプでもないし、セックスがお上手なのかどうかも分からなかったがなんとなく興味は沸いた。


私の彼氏以外とそういうことをしたいという気持ちの根源は、欲求不満ではなく好奇心にある。
この人としたらどんなふうなんだろう。
もちろん上手い下手も気になるし、私が知らない技が飛び出したらそれほど得したと感じられるセックスもない。
それ以上にその人のそのときしか見られないような表情や空気感を体験したいというのが大きな行動原理だった。
性欲という抗えない欲求により理性を失ってこのようなLINEを送ってくることがもう既にその非日常の始まりであり、
私はこの時点でかなりその気になった。


とはいえいきなり今日と言われても私にも都合があったので、
その日は丁重にお断りさせていただき、今度は前もって連絡いただくようにもお願いしておいた。


そんなことがあってしばらく経ったあとまた連絡があり、そこで日を決めて
先輩の誘いを受け入れることにした。

性欲の謎①

関東で下宿している高校時代の先輩が地元に帰って来た。


そのときに私に連絡をよこしてくれて、飲み会をやるからおいでと誘ってくれた。
所属していた部活のOBOGの飲み会ということだが、先輩が急遽集めたメンバーなのでほとんどが私の一個上の代の人たちだった。
久々に会う先輩ばかりで、私はバイト帰りに遅れて参加させてもらったが割と楽しむことができた。


二次会でカラオケに行くことになり、
それが決定した時点で数人いなくなり、
さらに数時間して門限や終電を理由にまた数人が帰り、
残ったのは私と同回の友人(女)と男の先輩数人だけになった。


しばらくはみんなでマイクを回して順に歌いながら楽しんでいたが、だんだん飽きてきたらしく
先輩がほとんど歌わなくなってみんなで雑談をする流れになった。
それも途中から恋愛などに話題が絞られた。
「もし部の中で付き合うとしたら誰?」「もし一度だけ関係を持てるとしたら誰?」
というような質問が飛び交い、それに対して順番に実名を出し合って盛り上がる。
そんな中身のないものだが、
普段こういう場に参加する機会のない私は新鮮な気持ちで過ごしていた。
そこからさらに内容はディープなものになり、話題は性事情へと移行した。


先輩が
「人に言えないような性癖を暴露する」
というお題を出した。
私は考えた。
ここでしょうもないことを言ってお茶を濁してもいいが、せっかくだし本音をぶつけてみても良いのではないか?
そもそもおかしな性癖もそれほどないと自分では思っているので、とりあえず浮かんだものをそのまま答えた。
「男性器の形を観察するのが好きです。」
場の反応は良くも悪くもなく、そんなやついるんだ〜というようなことをみんなが言っていた。
気を利かせた(?)先輩の一人が、女はどんな男性器の形を好むのかという話につなげてくれたが、
私は個人差を見るのが好きなだけなのでいまいち通じていない気がした。


そのあとも先輩がお題を出し、それについてみんなが答え、ときにはエピソードも添えて、そこに茶々を入れるというようなことを永遠に繰り返して
気づけば退店時間となった。


帰宅しても良かったのだが、
なんとなく話し足りないという空気が場を飽和しており、先輩に引き止められたのもあってもう少し留まることにした。
先輩の一人が車を近くの駐車場に停めていたので、
残ったメンバーで乗り込み、そこを三次会の会場とした。


正直言ってここでの話はほとんど主催してくれた先輩の自分語りが中心で、今思い返しても正確に思い出せないレベルの内容だった。(先輩ごめんなさい)
とは言えいくらかは私の話をしたり他の先輩の話を聞くタイミングはあった。


ある先輩(以下M先輩とする)のセフレの話をしていたとき、横にいた先輩が
「そういやこいつのちんこ、形変わってるよ」
と突然言い出した。


変わってるってほどじゃない!とM先輩は抗議していた。
これは私のさっきの性癖の話に対しての発言だろうなと解釈し、
どんな形なのかすごく興味があります
と返答した。
するとM先輩はふざけて
そんなん見せるだけでは終われないよ?笑
と言った。
ノリに便乗して
見せてもらえるなら舐めるくらいならやりますよ!下手ですけど!笑
と言った。
これが後のフラグとなった。

詐欺 完結

そのあと彼はすぐにパンツをはいて今すぐにでも寝ようという形だった。
イケたから満足という感じ。
それも自分が満足というより、イケるまで頑張った俺を褒めてくれというような態度だった。


私は以前に、彼氏とのセックスで一回しか挿入ができないことについて話していた。
その問題自体はもう解決に向かっていて触れるようなことでもないのだが、
その人はそれを覚えていて
何度もするってすごい難しいことだと俺も思うよ、
と聞いてもないのに彼氏のフォローを入れた。


彼は布団に潜って
疲れた〜と言いながら伸びをする。
お前さっきまで寝てただけだろ、とツッコみたかったけどイクというのはそれだけで体力を使うだろうからまあ仕方ないんだなと思い、
冷めざめとした気持ちで彼を眺めた。


私は眠くないんだよね、と言うと
ならシャワー浴びてきたら?
と提案された。
シャワー浴びて帰ってきたら爆睡してるんでしょ、嫌だよ、
と答えると
起きててそこに座って待っててあげるから
と言って意外にも起きだした。


浴槽にお湯を溜める間、鏡の前で並んで歯を磨いた。
二人ともパンツしかはいていないというあられもない姿で滑稽だった。
彼は鏡を見てようやく肩のキスマークに気づき
自分キスマークつけすぎ!!
と割と本気で怒っていた。
ざまぁみろ。


結局2人でシャワーを浴びることになったけど、
一緒に入るかー
という彼の発言から私が想定してたのとは違って、
私がシャワーを使い終わるまでは外で待ち、使い終わって浴槽に足をかけたところで入ってきた。


彼は終わっていない課題のことが気になり出したようで、
シャワーを浴びながら
やらないとやばい、終わらない
早く帰ってやりたい
というようなことばかり言っていた。
彼の声は通りにくく、シャワーの音に掻き消された。
正確に聞き取るのも面倒な気がして、なんとなく聞こえたことに適当に返事をした。


彼とシャワーを浴びるなんて、過去の私は想像もしなかっただろう。
だけど私が妄想するような甘い空気感なんて微塵も感じられない。
彼の目にはもう私は映っていなかった。


2人で会う時、彼はいつも
レポートが終わってないんだとか
サークルの仕事がとか
ブツブツ言って早く帰りたいという空気を出す。
実際話し始めたら長いこといてくれることが多いけど、
彼がもういいって判断したら
あー、やばいやらないと
って騒ぎ出してバタバタ帰りだす。
帰り道とかはいつも今から帰ったら何をしないといけないんだとか、これから怒涛のスケジュールでしんどいんだとかいうことを喚いていて、
それに返事をしているうちに家に着く。
いつものこれが今。


ちゃんと来て、構ってくれるだけありがたいんだけど。
彼は気分の浮き沈みが激しいから口で言ってることを鵜呑みにしたらだめなんだろうけど。
彼から今日は楽しかったよっていう言葉を聞いた覚えがほとんどなかった。
だいたい私が帰ってからLINEでお礼を言って、彼がそこに被せてくる感じ。
言わされてるとまで言わないけど、彼の本心なのかはずっと謎だった。
そんなことを考えている私は本当に面倒な存在だろう。


このとき時刻は3時を回ったあたりで、家にいたら寝ているであろう時間だった。
だけどホテルのチェックアウトは昼の12時。
そんなにバタバタしなくても十分休む時間はあるのに。
せっかく一緒にいられるんだからえっちはやめにしてもお話とかしたいのに。
言っても無駄なんだろうなと思った。


そうやって私が無表情に湯船に浸かっていると
彼はこちらを向いて
ごめんね、
と言った。


さっきまでの私を宥めるごめんごめんとは違う、彼が自分の意思で発した言葉。
なんだかすごく辛くなった。


今日という日が彼にとって少しは楽しみな一日だったのか、楽しい一日だったのか、私には全く見当もつかない。
結局意図も分からない。
ただ謝るってことは酷いことをしたって思ってるってことで。
私が傷つくのは前の日の通話である程度分かっていたはずで。
それでも彼はこの方法をとった。


電話越しに俺童貞じゃないよ、ってカミングアウトされたとして傷つかなかったとは正直言えない。
何者でもない私はおこがましくも嫉妬に狂って塞ぎ込んだかもしれない。
だけど、今日はなんだ?
私だけ一人で踊らされて
馬鹿みたいだったなぁ。


黙っていると自分がなくなってしまいそうで
酷すぎるよ、許さない!
と拗ねた顔を作って言ってみた。
すると
ごめん、もう連絡も一切しないし許して、
と言われた。


そうなるのか。
私が怒ったらもう連絡くれなくなるんだ。
こんなに辛いのに、私はそのことのほうがもっと辛いような気がした。
彼に何も望めないのは分かってるけど、もしこれで関係を断ち切られたら私はいよいよ立ち直れないだろう。
どうしてそんな風に考えてしまうのか分からない。
だけど私は彼とまだ繋がっていたかった。


どうして嘘をついたのか聞いたら
彼女もいないのに童貞じゃないってやばくない?
と苦笑いをしていた。
悩む、と答えた理由にはそれもあったらしい。
セフレという存在は後ろめたかったのだろうか。
私は彼氏がいるから考えたことがなかったが、確かに
彼氏いたことないけど初体験はもう終わってます、
って言葉だけ聞くと、ふしだらな子に思われるかもしれない。
とはいえもう大学生だし成人でもある。
おそらく彼女なしの非童貞は常々のコンプレックスで、
私に言えなかったのはいつも私が夢見がちに彼の童貞を欲しがったからだろう。


あんなプレイされたらさすがに童貞じゃないのは誰でも分かっちゃうよ、
と私は親切心で教えてあげた。
隠し通せるとは思ってなかったらしいけど、挿入は苦手そうだったから童貞設定のほうが気が楽なのかもしれない。


そんなことを言いながら彼も湯船に入ってきた。
高身長の彼が女と入るには狭すぎるサイズで、私たちはぎちぎちに浴槽の中に詰め込まれた。


彼と密着したいとずっと思っていた。
彼に触れている女に嫉妬した。
だけど私の欲望は
彼も私と同じようにドキドキしてくれるんじゃないかという妄想で一セットだったとこのときわかった。
彼の特に何も感じていないような顔を見ていたら、この時間もさほど特別なものではない気がした。


彼が出たのに合わせて私も出ることにした。
それぞれがそれぞれの体を拭いて、それぞれ服を着た。
備え付けの衣服ではなく、自分が今日着てきたものだ。
彼は私より先に脱衣所をあとにして、ソファでテレビをつけてスマホの動画を見ていた。
私は私でのんびりドライヤーで髪を乾かしてできるだけ見苦しくないようにした。


私が彼の横に座ったとき、彼は私の脚をまじまじと見た。
風呂上がりで火照っていたのでタイツははかなかった。
もし生脚に何か感ずるところがあったならそれだけは今日の収穫と言えよう。


彼と置いてあったおやつを食べながら、スマホの動画を2人で見た。
いつも通りの過ごし方だった。


お菓子がなくなったあたりで彼は再びベッドにダイブした。
後から向かった私のミニスカを捲くるとかいう小学生じみたイタズラをした。
そのあとすぐ布団に入って彼は二度目の睡眠に入った。
私は全然寝られなかったけど、もう彼を起こす理由もないのでとりあえず寝る努力をした。


このあとはもう書くようなことはない。


10時に目覚めた彼がバイトが9時からだったと大騒ぎして寝癖を直す手間も惜しんでホテルから出たのはもはや想定内だ。
部屋を出てから彼の家に至るまでずっと
やばいやばいと騒いでいた。
私はもう何も言えなくて、
おつかれさま
とだけ声をかけて別れた。
いつも通りの帰り道だった。


私が童貞詐欺にあったというそれだけの話。

詐欺⑦

私は彼の肩に噛み付いた。
痛くするほどではないけども。
するとようやく彼は目を覚ました。


目覚めちゃったのか
と言いながら私に擦り寄ってきた。
一睡もしてないんだけど、それは言わずに
ごめん起こして、とだけ言っておいた。


満足できてないから寝られないの?
と私にまた触れてきて濡れているのを確認して
いつでもできるな
と笑った。
寝る前からどろどろのままなんだよばーか。


彼は私に触れているときに何度か首筋に手のひらを掠めたりした。
それに何か意味があるとは考えてなかったけど、彼の一言で意味がわかった。


あー、首絞めたくなっちゃうな。
彼はそう言った。


私はかなりノーマルなプレイしかしてこなかったようで、噂に聞く首絞めプレイは未体験だった。
首を絞められたい願望などなかったけど、
彼がそんなことを言い出すもんだからものすごく興味がわいた。


首絞めたいの?セフレさんそういうのが好きなの?
と聞くと
いや、これは俺の趣味。
と返ってきた。
おかずにしてるAV女優の名前ですら渋って答えてくれなかったのにまさかそんな性癖があるとは。
処女モノで抜いてるとか絶対嘘だろ。


一回やってみてよ
と促してみると、
苦しかったらごめんな
と言いながら彼は私の首に手をかけた。


結論から言って苦しかった。
だけど、息ができなくて藻掻き苦しむような苦しさではない。
これで死ぬことはまずないだろうと思った。(ずっと続けられたらわからないけど。)
気道がすごく狭くなって上手く息ができなくなる感じ。
鉄棒でぶら下がって頭に血がのぼっていくような感覚があって、顔がどんどん熱くなっていく。
頭がぼーっとする。
これ、ちょっと…


眉をひそめながら感覚に浸っている私を彼はじっと見ていた。
彼は本当に私に対して興奮するとかエロいとか可愛いとかそういう言葉を言わないので、
何が楽しくて私の首を絞めているのかはよく分からなかった。
もしかするとその時の私が見るに耐えないブスで、何も感じなかったのかもしれない。
手から力が抜かれたとき、私は咳き込んでもたれかかってしまった。


大丈夫?嫌だった?
と彼は聞いた。
なんでかわからないけど嫌だった?という質問はすごくずるい気がした。
本当に死ぬ思いをしたらすごく怖かっただろうけど、そんなことはなかった。
苦しかったけど、悪くない気すらしていて、
何より彼がしたいということなら別に拒否する必要もないと思った。
その後も何度か首を絞められた。


それから彼の上に乗りかかって股間を太ももで擦りながらねっとりとキスをした。
彼は本当に何も言わない。
でも、
これはだめ
と言った。
私はなんだか嬉しくなってそのままキスを続けた。
すると彼は
今ならやれそうだからやろうと言った。
そしてゴムを手に取りながら、
やっぱり生のほうが気持ちいいなと言った。


童貞じゃないどころか生でもしたことがあるのか。
ちなみに私はない。
そんな経験があるのか、と驚きを隠さずに言うと
一回だけ。めっちゃ良いから安全日にでも試してみて
と言われた。


その後も何度か生でしたそうなことを言ってたけど、
それだけは本当に怖いし、彼氏にも許したことがないし、何より危険日真っ最中だったのでここだけは全力で拒絶した。
さすがにその無理強いはされなかった。


ちゃんとゴムをつけて、2回目の挑戦。
これに至っては初めから騎乗位だった。
私は激しく突かれるのが好きなタイプだが、彼はそうではないらしく
そんなに早く動かなくていいから、
と私の腰を制した。


スローペースの上下運動。
ぬるぬるして気持ちいいとは思ったけど、性感を刺激されるようなものではなくて
お湯に浸かってるくらいの快感。
彼が、
これいけそう、そのまま続けて
と言ったときの動きからできるだけ外れないように、頑張って同じ動きを同じ速さで繰り返した。
彼はいけそう、以外は何も言わない。
音もなく、不思議な時間だった。


顔を見せてと彼は言った。
恥ずかしいから嫌だと言ったけど、彼に無理やり顔を固定された。


じっと私の目を見ている彼の顔を見つめ返した。
整った顔だなと思う。
彼は特に表情を大きく変えることもなく、私をただ静かに見ていた。
顔をそむけるとダメと注意されるので
もう抵抗もせず、本当にただ静かに彼に顔を見せていた。
強い快感ではなかったけど、ときどき奥に当たったり、良いところに擦れたりして快感に顔が歪んだ。
それを彼はどんな気持ちで見ていたのだろう。


しばらくして
あー、イケそう、そのまま続けて
と彼は言い、
その数秒後に
イケたからもう動かなくていいよ
と全く声の調子を変えずに言った。


静かすぎてイったことにも気づかなかった。
動きを止めると、確かに中で脈打っているのがわかった。


余韻に浸ることもなく彼は私の腰を浮かせて、すぐに抜いた。
ゴムに溜まった自分の精液を見て
あ〜、良かった、やっとイケた
良かった良かった
と一人で締めくくっていた。


私はずっと言われるがままだったので急に訪れた終わりにもついていけず、
私が全く満足しないまま今日のセックスが終焉を迎えようとしていることに対しても何も言えずにいた。


ただその精液をぼーっと眺めながら、


どうせなら口に出して欲しかったな
と思った。

詐欺⑥

入れるのは初めてだからと言っていたのが
入れて動くのは下手だからに変わっていたのがどのタイミングだったかもう覚えてないけど、
やっぱりなという気持ちで特に驚きもしなかった。


でも彼の下手だからは謙遜でもなんでもなくて、本当に下手だった。


というかまず全然動かない。
動いてみてよと私が促すと、動きはするけど、ほんとに童貞のそれだった。
しかも下手だからと言ってそれ以上試そうともしない。
正常位もバックもしたけど、どれもあまり自分が良くないらしくてすぐにやめてしまう。
ていうかバックで動いていたのも私だ。
結局騎乗位に落ち着いた。


私も正直自分が率先して動くのは得意ではないので人のことは言えない。
よく聞けば、セフレとのセックスでは騎乗位でいかせてもらって終わるとかなんとか。
それでセフレは満足なんだろうか。


彼のものは特に奇形でもなく、小さいわけでもなく、日本人男性の平均といったところでさほど反りもないタイプだった。
それがどう作用しているのか、最中に彼のが何度も抜けてしまう。
それはセフレとするときもあるあるらしい。
こういうアクシデントは気まずくなりやすいし、男の子は特に焦って興奮が冷めてしまいやすい。
彼も例に漏れず、見ていると焦りが感じられて、硬度も弱くなって余計抜けやすくなった気がした。


私は正直彼は童貞だと思ってここに来ていたので、挿入後の期待値はまるでなかった。
よってそれほど落胆もなかったが、
童貞相手に私が頑張るのと、エッチ慣れしたこいつが何もせずに伸びている上で一人で腰を振るのでは何か違う気がして
何をするのが正解かよく分からなかった。


とりあえず頑張って腰を振って、私は私なりに少し良くなったりしたし、彼も気持ちいいと言っていたけどどうにもいけないらしい。


彼は自分がイくことにものすごく固執した。
固執したというかそれ以外の感想を彼はほとんど何も言わなかった。
いけないなぁ、違うなぁ
いけそうにないなぁ
ずっとそんなことを言っているので、私はなんだか申し訳なさを感じた。


フェラのときと打って変わって彼は本当に伸びているだけで何もしなくなってしまった。
あれこれ考えている様子だったけど、私のことを見ているかも怪しかった。


彼は何が楽しくてセックスをしているんだろう?
私は全然このセックスに満足できていないし、気持ちよくもないし、彼だけがイったところでだからどうしたという気持ちなのだが。
しかし彼は尚もイケないなぁ、イケないなぁ、お酒飲んだからかなぁと言って途方に暮れていた。


最終痺れを切らした彼が
もういっか、イケんくて。
お前は満足した?
お前が満足したなら俺的にはもういい。
と急に言い出した。


満足…?
満足とは?
これで満足なわけがあるのか?
なんと答えていいか分からずに口を濁していると
だいぶやったと思うんだけどなぁ、
と彼は続けた。
もうやる気がないのだ。


怒りよりもなんだか申し訳ない気がしてきて、
私ももういいよ、ごめんねイかせられなくて。
と答えた。
彼は特に気に留める風でもなく、
少し寝る
と言って私に体を寄り添わせてすぐに寝ついた。


私はというと全然眠くなかった。
腰を振って疲れたのはあるけれど、気持ち的にも体力的にもまだまだここからで
いきなり放り出されて状況についていけてなかった。


とりあえず彼氏に
こいつ全然童貞じゃなかった
とLINEした。


なんなんだろう。
相手が先に爆睡して、私一人でラブホの天井を眺めるのはもはや恒例行事か?


彼氏はすごく驚いて、それからすごく心配してくれた。
彼もすごく困惑しているのが伝わった。
私は本当に混乱していて、何から言っていいのか分からなかったけど、
分からない割には一息にあれこれ話した気がする。
彼氏は本当に優しくて、寝ようとしていたのに起きて私の話を聞いてくれた。


私は何をやってるんだろう。
彼氏にも心配をかけて。


優しい言葉をかけてもらってまた泣いてしまった。
その間彼は横でこのまま目覚めないんじゃないかというくらい爆睡していた。
私が物音を立てても全く起きる気配がない。


腹が立ってきたので、布団から出ていた肩をキスマークだらけにしてやった。