せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

詐欺⑦

私は彼の肩に噛み付いた。
痛くするほどではないけども。
するとようやく彼は目を覚ました。


目覚めちゃったのか
と言いながら私に擦り寄ってきた。
一睡もしてないんだけど、それは言わずに
ごめん起こして、とだけ言っておいた。


満足できてないから寝られないの?
と私にまた触れてきて濡れているのを確認して
いつでもできるな
と笑った。
寝る前からどろどろのままなんだよばーか。


彼は私に触れているときに何度か首筋に手のひらを掠めたりした。
それに何か意味があるとは考えてなかったけど、彼の一言で意味がわかった。


あー、首絞めたくなっちゃうな。
彼はそう言った。


私はかなりノーマルなプレイしかしてこなかったようで、噂に聞く首絞めプレイは未体験だった。
首を絞められたい願望などなかったけど、
彼がそんなことを言い出すもんだからものすごく興味がわいた。


首絞めたいの?セフレさんそういうのが好きなの?
と聞くと
いや、これは俺の趣味。
と返ってきた。
おかずにしてるAV女優の名前ですら渋って答えてくれなかったのにまさかそんな性癖があるとは。
処女モノで抜いてるとか絶対嘘だろ。


一回やってみてよ
と促してみると、
苦しかったらごめんな
と言いながら彼は私の首に手をかけた。


結論から言って苦しかった。
だけど、息ができなくて藻掻き苦しむような苦しさではない。
これで死ぬことはまずないだろうと思った。(ずっと続けられたらわからないけど。)
気道がすごく狭くなって上手く息ができなくなる感じ。
鉄棒でぶら下がって頭に血がのぼっていくような感覚があって、顔がどんどん熱くなっていく。
頭がぼーっとする。
これ、ちょっと…


眉をひそめながら感覚に浸っている私を彼はじっと見ていた。
彼は本当に私に対して興奮するとかエロいとか可愛いとかそういう言葉を言わないので、
何が楽しくて私の首を絞めているのかはよく分からなかった。
もしかするとその時の私が見るに耐えないブスで、何も感じなかったのかもしれない。
手から力が抜かれたとき、私は咳き込んでもたれかかってしまった。


大丈夫?嫌だった?
と彼は聞いた。
なんでかわからないけど嫌だった?という質問はすごくずるい気がした。
本当に死ぬ思いをしたらすごく怖かっただろうけど、そんなことはなかった。
苦しかったけど、悪くない気すらしていて、
何より彼がしたいということなら別に拒否する必要もないと思った。
その後も何度か首を絞められた。


それから彼の上に乗りかかって股間を太ももで擦りながらねっとりとキスをした。
彼は本当に何も言わない。
でも、
これはだめ
と言った。
私はなんだか嬉しくなってそのままキスを続けた。
すると彼は
今ならやれそうだからやろうと言った。
そしてゴムを手に取りながら、
やっぱり生のほうが気持ちいいなと言った。


童貞じゃないどころか生でもしたことがあるのか。
ちなみに私はない。
そんな経験があるのか、と驚きを隠さずに言うと
一回だけ。めっちゃ良いから安全日にでも試してみて
と言われた。


その後も何度か生でしたそうなことを言ってたけど、
それだけは本当に怖いし、彼氏にも許したことがないし、何より危険日真っ最中だったのでここだけは全力で拒絶した。
さすがにその無理強いはされなかった。


ちゃんとゴムをつけて、2回目の挑戦。
これに至っては初めから騎乗位だった。
私は激しく突かれるのが好きなタイプだが、彼はそうではないらしく
そんなに早く動かなくていいから、
と私の腰を制した。


スローペースの上下運動。
ぬるぬるして気持ちいいとは思ったけど、性感を刺激されるようなものではなくて
お湯に浸かってるくらいの快感。
彼が、
これいけそう、そのまま続けて
と言ったときの動きからできるだけ外れないように、頑張って同じ動きを同じ速さで繰り返した。
彼はいけそう、以外は何も言わない。
音もなく、不思議な時間だった。


顔を見せてと彼は言った。
恥ずかしいから嫌だと言ったけど、彼に無理やり顔を固定された。


じっと私の目を見ている彼の顔を見つめ返した。
整った顔だなと思う。
彼は特に表情を大きく変えることもなく、私をただ静かに見ていた。
顔をそむけるとダメと注意されるので
もう抵抗もせず、本当にただ静かに彼に顔を見せていた。
強い快感ではなかったけど、ときどき奥に当たったり、良いところに擦れたりして快感に顔が歪んだ。
それを彼はどんな気持ちで見ていたのだろう。


しばらくして
あー、イケそう、そのまま続けて
と彼は言い、
その数秒後に
イケたからもう動かなくていいよ
と全く声の調子を変えずに言った。


静かすぎてイったことにも気づかなかった。
動きを止めると、確かに中で脈打っているのがわかった。


余韻に浸ることもなく彼は私の腰を浮かせて、すぐに抜いた。
ゴムに溜まった自分の精液を見て
あ〜、良かった、やっとイケた
良かった良かった
と一人で締めくくっていた。


私はずっと言われるがままだったので急に訪れた終わりにもついていけず、
私が全く満足しないまま今日のセックスが終焉を迎えようとしていることに対しても何も言えずにいた。


ただその精液をぼーっと眺めながら、


どうせなら口に出して欲しかったな
と思った。

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