せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

キスマーク 完結

彼があまりにいれたそうなので、こっちも早く済ませて帰ろうという気持ちになってきた。
これ以上しても悲しいだけだろう。
明日も1限から学校だ、帰って寝なきゃ。


ホテルに備え付けてあるゴムの横に潤滑剤が並んでいた。
普段は使わないのだが、私があまりにも濡れないので彼がそれを使ってみようと提案してきた。
そういやこないだ彼氏と使ったとこだわ。
ゴムを手早く装着して、自分のにジェルを塗る。
私はそれをぼーっと眺めていた。
彼とするときはだいたい騎乗位なので何も言われなくても私は上に乗る。
ゆっくり挿入するとき、やっぱりいつもより全然濡れてないし、広がってないという実感があったが
この潤滑剤はかなり有能で、そんな状態でも彼のものをじわじわと飲み込んだ。
生理明けだからなのか、慣らし足りないからなのかすごくきつい。
彼のは前のときのほうが大きかった気がするけど、それでもきつきつだった。
彼はというとそんな締りの良い私の膣がよほど良いらしく、
やばい、これすぐイっちゃうかも…
と驚きの声を漏らしていた。
今までした中でも……かなり良い方……
と言うので
そこは嘘でも今までで一番気持ちいいって言っとけ、
と煽りながら自分で腰を振った。
彼はこの日ほんとに良さそうで、少し動いては
ダメだイキそうだ
と言って腰を止める。
まだ入れてから時間も経っていないのに、少しでも律動を繰り返したら達してしまいそうになるらしい。
気持ち良くなってくれるのは素直に嬉しい。
私は私で普通に気持ちいいけど、こんなノロノロ動いてるんじゃ満足できない。
名器だとかなんとか言って褒めてくれたら良いのに、気が利かないなぁ。
私に構っていられないようで、イクかイカないかの瀬戸際で1人で戦っていた。
そのうち、
今日は2回できる……かな?無理かな……
と言い出した。
相当イキたいんだろう。
イクことしか頭にないのが見てとれた。
それに対して特に何も感じるものはなく、イキたいならイッていいよという気持ちだけだった。
2回できるかもしれないことを仄めかすのは私にイクことを許可させるためだろうけど、
彼は1回いけば深い賢者タイムに入ってそれからすぐ寝るので
そんなことができないのは初めから分かっていた。
もう良いから早くイけ。
私はイクことを許可して、そのまま腰をゆるゆる振った。
彼はまた自分のタイミングで私の中でイッた。
中でドクッドクッと脈打つのが分かった。


その後彼は案の定賢者タイムに入り、急速に頭が冷えたらしい。
私に何度も何度も謝った。
酷いことをしてしまったと。
またすぐにイッてしまったことに対しても。
早漏なのは別に良い。
キスマークを見た時点で、時間をかけていただいても満足がいくセックスなんかできない。
気にしないでいいよ、と私が言っても
彼は永遠に謝り続けていた。
ひたすら申し訳なさそうに何度も謝る。
そんなにしおらしくなってるのも珍しいね、
と私が率直な感想を言うと、
だってほんとに悲しそうな顔するから…
と言われた。
頑張って空気壊さないようにしようと思ったけど、さすがに明るくは振る舞えなかった。
どんな酷い顔をしてたのか分からないが、多分大層な被害者面をしていたのだろう。
あー、良いけどさ、ほんとにさぁ…はぁ……
言葉にならずため息をついて項垂れると、
泣かないでよ、お願いだから
と言われた。
こないだのように勝手に泣いてるとかそういうことはなかったけど、
もう少し配慮してくれても良くない?するなとは私は言えないんだからさ…
と説教を始めようとすると声が震えてしまった。
ダメだ、今日は喋らないほうがいいな。


普通のセフレだったらこうはならなかったよな
と彼は言う。
普通のセフレってなんだろうね。
私達ってなんなんだろうね。
私は他のセフレより君を特別に見てるよ。
なんなら君は別にセックスするための友達じゃないし。
私にとっては特別な人なんだよ。
なんでわかんねぇかなぁ。
だけど、彼氏という存在がある限り、彼の中で私の気持ちは説明がつかず納得もいかないのだろう。
仕方ないことだとは思う。
私の中ではこの気持ちの整理はある程度ついていて、彼氏とは別のベクトルの、だけどただの男友達ではない“好き“として完結してる。
でもそれを他人が理解するのは難しいのだろう。
俺はどういうスタンスでいたらいいの?
と彼は聞いた。
分かんないけど、私が君を彼氏とは違う意味だけど確実に好きで、他の女に嫉妬することは知っててほしいな
と伝えた。
すごく勝手なことなんだろうな。
そんなこと言う権利は私にはないんだろうな。
だけどこの日彼はそういうことは言わないで、ただ謝るだけだった。
ベッドの縁に座る私の足元に跪いて、私の目を見て
ほんとにごめん、
と言った。
そそくさ帰ろうといういつもの態度はどこへやら、私の気を少しでもひこうとしているような気すらした。
部屋を出るときにもドアの前で振り返って
ごめんね、
とキスをした。
許すとか許さないとかじゃないんだろうけど。
なんかもうわかんないや。


ホテルを出て、自転車置き場についたときに彼は友達から連絡を受けて、ただならぬ様子で
友達に電話する要件ができたから今からかける、
と言って電話し始めた。
ここで解散しようかと提案したけど、家まで送るというのでついてきてもらうことにした。
しかしうちの家の真ん前までずっと電話していたので特に何も話せなかった。
サークル間の痴情のもつれで友達の気が滅入ってるとかなんとか。
それを励ますための電話だった。
いや、絶対それやるの今じゃないでしょ。
優先順位くらいちゃんとつけろよ
そんなんだから彼女できねんだよばーか。


家の前でやっと電話を中断した。
私はもう疲れていて、彼を置いてすぐ帰ろうと考えていたのだが
彼がもう少し話そうと言うのでとりあえず立ち止まった。
だけど引き留めておきながら彼は話をするわけではなく、
あー、ほんとにごめん……俺もだいぶ疲れた……
などとブツブツ言うのみなので
適当に切り上げて結局すぐに帰った。


セフレにキスマークがついてるごときでこんな風に騒ぐのはおかしいんだろうか。
世間一般を知らない。
だけど私はセックスのときはその人に没頭したい。
彼氏がいるとかいないとかセフレがいるとかいないとか考えずに。
私だけを見てほしい。
それがベッドの上でだけ許される勝手だと思っていたし、そういう嘘をつくことがセックスでの暗黙の了解な気すらしていた。
私が組み立てた勝手なルールだったのだ。
しかし何よりも、彼の言うとおり
ただのセックスパートナーならここまで拗れないのだろう。


彼の中でこの件がどうまとまるのか、
今後どうしようと考えるのか分からない。
めんどくさい女だから切られるかもしれないな。
そのほうが良いのだろうという気持ちが膨らむ一方で、
どうすればもっと彼の特別になれるのかと考える自分がいるのだった。

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