せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

慰み 完結

体触っていい?
彼がそう聞くので私は頷く。


それを合図にそっと抱きしめられキスされた。
首筋や耳にもキスされているうちに体から締め付け感がなくなった。


え、今ブラとったの?


うん。


マジで全然気づかなかった。
片手しか背中に回ってなかったしまだ服も着てるしそんな動きをしてるように感じなかったのに。
私が気を取られてたのもあるだろうけど手際が良すぎて笑ってしまった。
姉がいるから下着の形状は分かるし…
というようなことを言っていた。
見て知ってたら誰でもこんなに早くとれるものなのか。面白い。


服の下に手が入ってきて胸に優しくあてがわれた。
彼氏以外が触ってる……
不思議な感覚だけどあまり不快感はなかった。
手探りで見つけた先端を指で弄ぶ。
服がまくられ露出したそれを舌で転がされる。
友人の元彼。
付き合ってるときはこんなこと全く想像しなかった。
人生何があるかわかんねぇな、というようなことをこの日何回か考えさせられた。


八重歯で噛まれて強い痛みを稀に感じる以外はすごく良かった。
そのあとも体の至るところをやたら舐められたが、
舌使いが上手いのか私が興奮しすぎていたのか、特に性感帯とも思えないとこを舌が這っていくだけでぞくぞくした。
彼は私が嬌声を漏らす度に
可愛いね
と言ってにこにこしていた。
普段話すときの声はもう少し落ち着いているようで、意外だったらしい。
自分ではいつもの声もこういうときの声も意識していないし意識的に変えているわけでもないので、少し恥ずかしくなった。
あざとく聞こえているのだろうか。
とにかくも彼は私の声を気に入ってくれたようだった。
声フェチなのだと付け加えていた。


彼の手が太ももに伸びてきて、脚の付け根をそっとさすった。
触れられた周辺を意識してしまってどきどきする。
この日は短パンを穿いていた。
指はズボンを掻き分け下着を横にずらし、さらには肉も掻き分け私の中に侵入してきた。
こういう風に脱がされることなく隙間から入り込んで触れられることが今までほぼなかったので、それにも興奮した。
不意に友人が、
彼は全然脱がそうとしないから着エロが好きなんじゃないか
という話をしていたのを思い出した。
あとで聞いたら実際そういうわけではないらしいのだが、
脱がさずに事を進める術に特化してるというのも面白すぎるだろ。


指がゆるゆると中で動く。
焦らしているわけではなくてずっとそんな感じだった。
でも絶妙に気持ちいいところを擦られてて、静かに溶かされていくようだ。
私が激しくされるのが好きだと公言するより前から、彼氏は割と指を大きく使うタイプなのでこれは初めての責められ方だった。
そもそも(私は気持ちいいと感じているけど)がしがし動かすのはAVの世界だけだとか言われているくらいだし、これがほんとの手マンなのか!?とか思って楽しくなってしまった。
とはいえ実のところは
彼氏とこの人を足して2で割れば完璧だなというのが最終結論である。


彼は元カノをイカせたこともあるらしいので、私の体質がちゃんと出来上がっていればイケたのかもしれないけど、
しばらくされるがままになっていてもイくというような気配はなかったので、イッたフリをした。
こういう場面で軽率にフリをして済ませるのは良くないのだろうといつも思うのだが、その予兆もなくただ自分がよがっているだけという状態が長く続くと
そろそろ向こうは退屈なんじゃないだろうか、
早く終われと思われていないだろうか、
手が疲れてきたのではないだろうか、
などとあれこれ考えてしまうのである。
そういう思考に陥ったらドツボで、焦燥感により余計に絶頂が遠ざかるのだった。
しかもイクふりは存外気づかれないものである。


彼はまた優しく抱きしめてくれた。
一貫して優しく、とても大切に扱ってくれた。
私に欲情してくれているのもすごく伝わったし、私を満足させようとしてくれてるのも分かった。
この機会をすごく貴重だと捉えてくれていたようだ。


このあと用意してくれていたお菓子を食べて、猫と戯れたりしながら彼の部屋で過ごした。その間も時折私をじっと見て不意にキスをした。
なんとも言えない充足感がある一日だった。
この地を経つ彼の新生活の始まりが、連れ添った彼女に振られた絶望ではなく、僅かながらでも前向きなものになるような一日になっていれば本望だと思った。

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