せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

ラブホ街の夜 ③

ロビーにはよくある部屋を選ぶタッチパネルの他に、
ドリンクバーと漫画が並んだ棚があった。
なんだここは、遊び場か?
とっとと入ったので外に出ていた看板などにはあまり目を通せなかったが、
ヤリモク以外の集客も狙ってる店舗なんだろうか。
価格も安く設定されており、彼によれば部屋もあまり広くないらしい。
まあ、ベッドがあれば問題ない。


最安の部屋を選んでエレベーターに乗りこんだ。
ドリンクバーに興味があったが、飲み物を買ってきてくれたらしいのでスルーした。


部屋に入ると、小さい机とキングサイズのベッドが部屋の90%を占めてるくらいの広さ。
ここで目を引いたのがベッドの上に当然のように置かれたピンクのブツ。
ローター?
初めて見た。
無料で自由に使って良いというような旨のことが書いてある。
玩具に良い思い出はないのだが、、、
そんなことを思いながらとりあえず隅に避けた。


入ったときには既にテレビがついていた。
家で見るのと変わらない夕方のニュース番組だ。
雰囲気もクソもねぇ。
しかし私がコートを脱ぎ、荷物を置き、ベッドに腰を下ろすという動作をしている間に
彼が部屋の照明を若干暗くした。


一気にそれっぽくなる。


彼は飲み物をどういうわけか大量に買っていて
その中から好きに選んでいいというので、レモン味の缶チューハイを選んだ。
ちびちび飲みながら雑談でも始めて落ち着こうかと考えていたのだが、
彼は思っていたより性急だった。
なんかいつもと違わない?
こんなエロい服装いつもしてるの?
などと聞きながら私の太ももをさらっと撫でる。


こんなエロい服装、というのは
おそらくタイツとミニスカートのことだろう。
タイツは厚手で太めの糸のものだが、レースっぽい網目になっている。
スカートは黒地のタイトなもので、膝上が見えるくらいの長さ。


正直いつもしてるっちゃしてるし、してないっちゃしてない。
そもそもバイト以外で遊んだことなど数えるほどもないのに
彼の言ういつもとはなんなのかと思ったが、
んー、いつもよりはオシャレしてるかもなー
と適当に答えておいた。


彼はすぐに体に手を這わせてきた。
そして顔がそっと近づいてきて軽くキスをした。
彼の手つきは落ち着いていて、優しく、ゆっくり、しかしいやらしく私を撫でた。
すぐに胸などに触れることはせず、
体を確かめるように指先でなぞっていく。
突然モードが切り替わったのが少し面白かったのだが、
流れの作り方として完璧すぎたので感心してしまった。
まだいまいちどうして良いかもわからず、
とりあえずされるがままに快感を受け入れた。


想定してたより全然良い。
むしろ良い。


気になることと言えば彼がときどき笑うことだ。
慈しむように笑うのではなく、明らかにおかしくて笑っているような。
彼は精一杯雰囲気を作ろうと声のトーンを抑え、私を気遣う言葉をかけ、キスをするのだが、
ときたま糸が緩んだようにふふっと笑う。
何がおかしいのー?と聞いても
別に
と答えるだけで、また元のモードに戻る。
沢尻エリカか。


キスで歯が軽く当たっただけで間の悪さに身じろいだり、ため息をついたりするので
こいつはもしかして自分の思う理想の立ち居振る舞いに努めることに全力なだけなのでは?と思えてきた。
まあそれはそれで悪いことではないが、
それに従事しすぎては緊張も解れないだろう。
それとも笑ってるのは私の顔か態度がおかしいからなのか…。


気にしていても仕方ないので、思い切って舌を絡めてみる。
キスも比較的落ち着いていて、荒々しさはない。
焦らず、ねっとり絡まってくる。
ましてやときどき寸止めして焦らしてくる。


こいつ〜

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