せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

キスマーク①

あの日の出来事はあまりにも一瞬で、それにしては自分でも意味がわからない程にショックが大きすぎたため、もう記事にしないでおこうと思っていた。
しかし
あれから1週間が経っても気持ちが晴れなかったので
やはり文章にして残しておく。



童貞をもらい損ね、1人で勝手に精神を病んだセックス。
そこからもう一度体を重ねる機会を経て、一ヶ月ほどが過ぎてから
彼と飲みに行く約束をした。


と言うのもこんな関係になる以前の、彼が成人した日に近々飲みに行こうと声をかけていたのだが、
全く釣れない返答によりそれから数カ月も経ったこんな時に先延ばしにされたのだった。


念願叶ってついに約束を取り付けたものの、彼のLINEの返信と言ったらスマホゲーの運営よりものろく気の利かないもので、
私は当日を迎えるまでに焦れてかなり苛立っていた。
結局、時間も場所もその日になっても決められずそのときの勢いで適当に行こうということになった。
あわよくば店の予約まで済ませようと一週間前から彼に連絡を送っていた私はこの結果にはかなり不服で、
また彼がこの日を煩わしく思っているような被害妄想まで浮かんで、行く前から気が沈んだ。


とにかくもそのときはやってきた。
彼は待ち合わせ場所の駅にいて、私を見てさぁどこにいくんだ?というような顔をしていた。
彼が何も決めずに来るのは分かっていたので私は目星をつけていた店の場所を説明した。
自転車で並走して向かう。
彼とこういう関係になってから行為目的以外で2人で会うということがなかったので、友達として過ごせていることにはなんとなくホッとした。


適当に言葉を交わしながら目的地を目指していたのだが、彼は慣れないところに行きたくなかったのか目的地手前で見つけた別の居酒屋の前で足を止めた。
え?何故?
まあ場所に特にこだわりもないし、予約もできていないのでなんでもいいのだが。


どこにでもある焼き鳥屋のチェーン店。
この店舗に来るのは初めてだったが、当然どこも同じような感じだ。
私はいつも頼むものをいつも通り頼んだ。
お酒もいつも通り頼んだのだが、彼は飲まないと言った。
もともと弱いようで、すぐ体調が悪くなるらしい。
飲むことで強くなる兆しもないしもう飲まないことにしたのだと丁寧に説明してくれたが、
サークルでは飲んで酔って楽しそうにしているじゃないか、
という反論が喉元まで出かかるのをなんとか抑えた。
まあいい、無理して飲むものでもない。
私は遠慮なく飲ませてもらおう。


それからあれやこれや話して食べて飲んで時間が過ぎた。
かなり腹も膨れたところで、彼が
一番最近は誰としたの?
と聞いてきた。
私が正直に
彼氏かな
と答えると、
他の人とはしてないの?
としつこめに聞いてきた。
んー、してないし、そもそも今はあんまり興味がない。
彼はよく私にこういうことを聞いてきたり、他の人の話(彼氏含め)をさせようとしたりするけれど、
それが私が言葉に詰まるのを楽しんでやってることなのか、単純な興味なのか真意がよく分からない。
彼が聞いてきたので私のほうからも、最近は誰かとしてないのかと聞いてみた。
すると
ないなぁ、出会いもないし、ほんとに何もない
と面白くもなさそうに答えた。
まあ、あったらあったで私は落ち込むから聞きたくなかったしいいけどね!
と私が言うと、
あったほうが面白い反応が見られたかもね、もし何か起きたらすぐ言うね
と意地悪を言ってみせた。
この返答に私はすっかり何もないのだと思いこんでしまった。
彼の口調、態度に完全に安心し、信用しきってしまった。
本当に馬鹿だった。


色濃い痣が首筋にべったりついているのをうっかり見てしまってもなお
もしやあれはキスマークではないかもしれない
と都合よく考えてしまうほどに頭がお花畑だったのだから。

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