せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

詐欺⑤

彼が私に触れる。
それ自体が非日常だ。
異常な世界線だった。


それも私が考えていた、初体験の相手をするとかいう勝手な妄想とはかけ離れて、
いつの間にか大人になっていた彼に現実を突きつけられるというもの。
私は泣いてしまった。
展開に押しつぶされてしまった。
なんて夢見がちだったんだろう。
何を勘違いしていたんだろう。


泣かないでよ、と彼は苦笑して、キスをする。
こっち向いて、顔見せて
そう言って彼は私のことを見る。
嫌がっても無理やり目を合わせられる。


どこで覚えたのそんなこと。
誰とするときもそうやって感情の読めない目でじっと見つめてるの?


童貞じゃないならなんで嘘ついたの?
何回目か分からない質問を再び投げつける。


入れるのは初めてだから。
この後に及んでまだそんなことを言う。
触るだけでいつも終わってたってこと?入れるのだけはだめって言われてたの?
追い打ちをかけるように重ねて聞くと彼はまるで覇気のない声で目も合わせずに
うん
という。


嘘だ。


嘘が過ぎる。


でももしかすると、妊娠に敏感だったり、付き合ってないから挿入はだめ、みたいなルールを作ってる女がセフレなのか?
彼がなかなか認めないので私はそういう可能性について頭を巡らせた。
ベッドに行くまではキス以上はしてないと断言していた彼も、いつの間にかキス以上挿入未満という主張に意見を変えていて、やっぱりなという気持ちだった。
何を言われても嘘に聞こえた。


胸と下と耳を同時に攻められて
嫌でも思考が止まる。
こんなことをしてる場合ではないんじゃないか、こんな仕打ちを受けてされるがままによがっている場合ではないんじゃないか、
そう頭の片隅で主張する私がいたけど
彼の顔を見ていたら、この状況をありがたいと思って浸っておくべきではないかという考えに取り憑かれる。


具体は抽象になって、そのまま霧散して、私の頭の中は彼から与えられる快楽だけになってしまった。


それでも涙は出た。
やるせない気持ちで、胸が締め付けられるのは変わらなかった。


なめるのは好きじゃない?
と彼が聞いた。
なめるって、下を?
と聞き返すと、そう。と一言だけ。


彼を攻める指示が出たのは初めてかもしれない。少し嬉しくなった。
なんなら初めからそれを目標にしていたので、私は言われるがままに彼のを口にした。


あー、ヤバいかも。
彼がそう言って私を止めようとした。
ここは譲ってはいけないと頑なに拒否して舐め続けた。
どうやらセフレさんよりは上手だったらしい。
この瞬間が一番楽しかったかもしれない()
こうされていると俺から何もできなくなっちゃうから嫌だと彼がいうので
なら頭撫でててよと言った。
案外言うとおりにしてくれた。


彼の反応は気持ちいいのか良くないのか本当にわかりにくかったけど、
うまいね、って言ってくれたのは嘘じゃない気がした。
そうしているうちに彼は急に私の頭においた手に力を入れぐっと喉奥まで無理やり自分のを押し込んだ。


出た。
ドSだから絶対こうなると思ってた!


彼氏のに比べて短いからまだ耐えられたけど本当に死ぬんじゃないかと思った。
その人相手じゃなかったら私はもう少し強めに抵抗していただろう。
彼は何度も私の頭をぐっと押さえつけ、喉の奥までそれを突き立てた。
ある程度奥までいったら、私の手首を掴んでベッドにも体にも触れられないように頭より上で静止させられた。


なるほど、こうしたらベッドを押し返して抵抗できなくなるわけだ。
ドS怖いなぁ
もはやそんな悠長なことを思っていた。
私にとっての初体験ばかりで笑える。


本当に苦しかったし、さすがにこれで目覚めるってことは私はないだろうと確信した。
私が苦しんで藻掻きながら必死に呼吸法を考えている間、
あったかくてこれが一番気持ちいい
と笑ってる彼はほんとに狂ってると思った。
だけど嫌だった?と聞かれて
本気で抗議するわけでもなく、逃げ出すわけでもなく
苦しいけどそんなに嫌じゃないかも…
とか返してる私が一番異常だったかもしれない。


そのあと彼は
いれたい?
と私に聞いた。


こういう聞き方はあまり好きじゃないので、入れたいのは自分じゃないの?
と普段なら噛み付いていただろうが、
うん、入れたい
と力なく答えるしかできなかった。


私ってMなのかなぁ
別にねじ伏せられたわけでもないのに勝手に力の差を感じて無抵抗になってしまう。


彼はラブホに備え付けられたコンドームを手にした。
2つあった。
2回分あるね、私ゴム持ってきたけど。
私がそう言うと
俺もゴムは持ってきたけどな。
と彼は言った。
そんな話をしながら手早く彼はゴムを装着した。



絶対に童貞じゃない。

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