せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

性欲の謎⑤

これで合ってますか…?
と私は聞いた。
気持ちいいし、合ってるんじゃない?
と言われた。
うーん、ほんとかぁ?
そう言われたら何も言えないんだけど…
良かったです、と言って笑っておいたが、なんとも釈然としない気持ちだった。
そのあとも必死になってる私をじっと見てるので
そんなに見られると恥ずかしいんですけど…
と言うと、
いやぁ、なんか一生懸命で可愛いなと思って
という返答があった。
うーん、なるほど。
普段なら喜んでいるところかもしれない。
しかし、なんとなくこの先輩の場合そういうウブな頑張りではなくてもっとすごいテクを期待してたんじゃないかという気がして
どうにも素直には受け取れなかった。


そのあともう一度正常位に戻った。
私は数週間前の飲みの席で話していた立ちバックやらなんやらを期待していたが、
久々すぎて特殊な体位ができる気がしないと言うのですぐに断念した。
かと言って正常位ならできるのかというとやっぱりそんなこともなくて、先ほどと同じくちょっと動いては止まる、また動いては止まるを繰り返していた。
私は気持ちいいようななんなのか分からない気持ちのままとりあえず無難に喘いでその場をやり過ごした。
程なくしてなんとか先輩が達し、この日のセックスは終了となった。
キスくらいしてくれたような気もするが、事後に甘い雰囲気が漂っていた記憶はなく
お互いに
なんとか最後までいって良かった、
と考えていたに違いなかった。
先輩は、お前がエロいことは十分に分かった!体験できて良かった!
みたいなことを大きな声で言って場を締めた。


私はここで先輩に最中聞きたかったことをぶつけてみた。
やっぱりこれまでしてこられた方はすごかったんですか?
すると先輩は私に気を遣う様子もなく
そうだなぁ、これまでの人らはちょっと特殊だったんかもな
と苦笑いのような顔を作って言った。


先輩はすごくモテてヤりまくっているというタイプではないようだが、どこかしこからビッチなセフレを作ってそれなりにはセックスをしていたらしい。
そういう事情は飲みの席でネタ話として先輩が披露していたので既知の事実だった。
それも紐パンにゴムをぶら下げて(?)来るような女だったらしく、
自分がビッチと呼ばれるようになったとしてもそういう痴態を晒すことはしないでおこうと肝に銘じていたところだった。
そんな人たちとのセックスと比較されたら私のはどう考えても面白みのないものだっただろう。


先輩はさらに続ける。
フェラのときにはただしごくだけじゃなくて舌が口の動きとは別にぐるんぐるん回ってたし、騎乗位は体が波打つように動いていた。あれは素人の芸当じゃないな、
と。
それはもう風俗嬢かAV女優か淫獣だったんじゃないすか、先輩。
まさかテクニック不足でここまで敗北するとは思ってなかった。
次するときまでに頑張って練習しますね!
そうポジティブに返答すると、
え、次もあるの?
となんだか微妙な表情になった。
いや空気読めよ。
誘わなかったら良いだけの話なんだからさ。


なんやかんやすごく悔しくて、もっと頑張ろうと思う一方で、
気持ちよくなれなかった上に満足させることもできなかったということにやるせなさを感じ、さすがにこの時間を無駄だったと思わざるを得なかった。


セックスが終わったとはいえホテルから帰宅するわけではない。
すぐに寝ればいいのかもしれないが、目が冴えていて眠れそうになかった。
先輩も寝る寝ると言いながらずっとスマホを触っているので、私のほうからいくつか質問して雑談をした。


そもそもそんなに器用な先輩でもない。
いつも集まろうと場を作ってくれる先輩の取り巻きのような存在で(酷い言い様ではあるが)、本人が何か面白いことをしていた記憶はあまりなかった。
ただ優しい先輩ではある。
私はこの日初めてこの先輩と2人でだらだら話をした。
なんだかお泊り会みたいで楽しい気がしませんか?
などとおどけて盛り上げようとしてみたけどいまいちよく分からない空気が漂っていた。
こんなに入り込めないセックスも人も初めてで、ひたすら何をやってるんだろうという気持ちが私の心を充満していた。


先輩が寝てしまってから、一人でラブホテルの天井を眺めていた。
私にテクニックが足りなかったというのは本当に反省点だけれど、
こんな惨めな気持ちになるなら来なくて良かったなぁ。
とはいえセックスは男の技術だけでは成り立たないのだし、私に至らない部分があるならそれは改善していかないといけないんだけど…
ちょうど彼氏ともそんな話をしていたところで、相手にもちゃんと楽しんでもらえるように努力をしようと決意したところだった。
その矢先のこれで、自己嫌悪と精神疲労と、それから虚しさを感じずにはいられなかった。
頑張ろうって決めたとこだけど。
わがままなのは分かってるけど、
ただ素直にセックスすることが好きで、楽しいって手放しに思ってくれる人とセックスがしたいな
と思った。
疲れていてそういう自分本位な考えばかり浮かんだ。
しかも普段から特に魅力を感じていなかった人としてしまって、さらには何も得られなくて
一体この時間はなんだったんだと一人でため息をついた。


起きていても仕方ないので、しばらくして眠ることにした。

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