せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

姫初 完結

タオル敷かなくて大丈夫かと聞くと
まあ、大丈夫でしょ、
と言いながら上体を起こした。
汚れても知らんぞ〜。


立ち上がって脱げかけのズボンを下ろし始めたので私も同じくベッドから降りた。
見られるの恥ずかしいからこっち向かないでねと言うと、
素直に壁際を向いてくれた。
姉のを見たことがあるからなんとも思わないけどね、とブツブツ呟いていたが。
お姉さん…。


どこからかゴムを取り出し、手際良く装着した。
いつもはホテルに常備されているものを使うので、こうやって彼が自前のゴムを取り出すところを初めて見たかもしれない。
そら持ってるよな。


いつもは彼が仰向けに寝てるところから始まるのだが、今回は私が下だった。
そっと脚を開くと彼が割って入ってきた。
汚れることは気にならないとのことだが、手は使いたくないらしく
入口の場所を把握するのに手こずっている。


私が軽く誘導すると、そのままゆっくり中に入ってきた。


いっ………てぇ


やっぱり解してないからきつい。
いくら興奮して濡れているとはいえきつい。
裂けるような痛みはないが、明らかにいつもより抉じ開けられるような感覚がある。
私が眉をひそめて呻くと、


痛いな、ごめんな、
ゆっくりはいるから、頑張ろうな


とめちゃめちゃ優しい声で囁いた。
私がいたい、と言うとその度に
いたいな、ごめんな
と繰り返しあやすように言う。
その声に溶かされるように、少しずつ彼のを受け入れた。


全部入ると、彼がゆるゆると動き出した。
まだスムーズに動けるほどではないが、最初ほど辛くない。
彼が私に跨るのは久々な感じがする。
彼の言うように前より腰の振りが自然だった。
一体何人抱いてきたんだか。
私にそれを披露するの遅くない??


多少強引に広げられている感じがあったが、
私をいたわりながら優しくセックスしてくれてることに興奮してだんだん良くなってきた。
濡れてきて動きやすくなった、
と彼に言われて余計に意識してしまった。


気持ち良さそうな彼をこの角度で見られるのやっぱりいいなぁ、
正常位最高。


すると、今度は後ろからしようと提案してきた。
うわーバックも久々だな!


言うとおりに四つん這いになって彼のを待つ。
やはり手を使いたくないらしくまた入口を見失って彷徨っている。
先程の正常位で十分に潤ったそこは受け入れ体制万全でなんとももどかしい。
思い切って突っ込め!
と耐えかねて訴えてしまった。


彼のがぬるりと侵入してくる。
やっぱり、入るときが最高にやばいなこいつのは。
彼も良さそうで、
何度も気持ちいい、と言いながら私の腰を揺すった。
私が律動に喘いでいると、
いきなり尻肉をぎゅううと掴まれた。
たださすがお尻、肉が厚くて全然痛くねぇ。
急にどうしたのかと思ったら、
ごめん、調子乗った
と言って彼が達した。


彼のが脈打つのが分かる。
どくっ、どくっ、と中に吐き出されているような感覚。
疑似中出し。


彼は一瞬固まって、
マジでごめん…………
と謝った。


何を謝られているのか分からなかったが、
どうやら早くイッてしまったことに自己嫌悪しているらしい。
ほんとにごめん、
と心底申し訳なさそうに言うので笑ってしまった。



抜いたあと確認してみたが周囲は汚れてなさそうだ。
ぬるぬる出てたのは血まじりの液体のはずだが、特に気になる汚れもない。
ひとまず安心か…。


彼はゴムをはずし、下着に脚を通しながら
あー、ほんとにやってしまった……
とボソボソ嘆いていた。
そんなに気にしなくても、と私が言うと
だってもっとしたかったから!
と語気を強めて言った。


確かに、2回目ができないのは良いとしてこいつ出したら寝るもんな。
それならもうちょい粘ってほしかったかなぁ。
特に気にしてなかったがあんまりにも謝るのでだんだんそんな気がしてきた。


時間も良い頃合いで、彼も眠そうな様子だったので
とっとと着替えて帰ろうと思ったのだが、
私が下着を付け終わるとそっと引き寄せられベッドに2人で倒れ込んだ。


眠たいならちゃんと服着て寝なさいよ、
私もう帰るから!
と起き上がろうとすると
寝ないからもう少し一緒にいよ
と言って私を抱きしめた。


絶っっっ対に寝るのはもう経験でも声色でも分かっている。
ましてや4時半に帰れと言われていて今は4時。
私も私で睡眠を取りたいのだが今ここで寝たら二人して目覚めるのは昼頃だろう。
となるとやはり早いこと退散するのが賢いと思うのだが…


彼の体温の心地よさに負け、
絡みついた脚の重みにしばらく身を委ねることにした。



数分と経たず彼は寝息をたて始めた。
彼にとってイクことは相当体力を使うことなのだろう。
それかイった後に爆速で眠ることが習慣化してしまっているため睡魔が連動しているのか。
なんにしろ彼が眠るのは今のところ100発100中だ。
ピロートークタイムは彼が下着をはいて布団を被る作業中のみ。


まあいいんだけどね。


もしこれも私に対してだけで他の子とはもうちょっとゆったりしてるとかだったら絶対にぶん殴ってやろう、
そう決意しながら私はそっと布団を抜け出した。
起きる気配はない。


物音を最小限に散らばった服をたぐり寄せ、袖を通した。
そのあとはしばしストーブの前で暖をとりつつ、遠目に彼の寝顔を眺めた。
気持ち良さそうに寝ている。
そのあと改めて部屋を見渡す。


高校の参考書。


今は使っていないらしい見覚えのあるリュックサック。


物置と化した勉強机。


飾られたサークルの寄せ書き。


古いたんすと古いストーブ。


この部屋を使い始めたのは4、5年前ということだが、それを裏付けるように
彼が入居する以前からある古ぼけた家具と私が知る彼と知らない彼とが混在し
異様な雰囲気を持った部屋だ。
彼が今寝ている折りたたみ式のベッドも畳と絶妙にミスマッチである。


バイトで帰りが遅かったり、サークル仲間と飲んだくれたり、セフレの家に転がり込んだりと充実した大学生活を送っているらしい彼は
この部屋にほぼ寝に帰っているだけなのかもしれないなとふと思った。


約束の時間あたりになっても彼は目覚めないので、
ベッドの端に腰掛け、彼の肩をつついた。
もう時間だから帰るね、
というと寝ぼけた彼はまた私を布団に引きずりこんだ。


寝ていたことを誤魔化すためか、努めて普段通りの調子で
今までベースでやった曲の中で一番難しかったのはなに?
と聞いた。
私の担当楽器はギターですよお兄さん。
誰とお話してるんですかぁ?


は?と言って私が吹き出すと、彼も自分が珍妙なことを口走ったのに気づいたらしく
俺、今何言った?
と少し笑い、そしてまた眠りにつこうとしていた。


私も落ち着いてゆっくり眠りたいし、朝に飛び起きた彼に追い出されるのも嫌だったので、
意を決して布団から出て、
今度はコートとマフラーを巻いてからもう一度声をかけた。
今日は誘ってくれてありがとうね、
帰れるからこのまま寝てて良いよ。
すると彼は
いや、見送らせて、
と言い、やっと体を起こして急いで服を着た。


私達2人しかこの世界にいないと錯覚するほど静かな朝だった。
冬の5時前は太陽もまだ目覚めていない。


家の前まで見送りに出てきてくれて、私が自転車を漕ぎ出すまでそこにいた。
なにせ寒く薄着で出てきた彼がガタガタ震えているので、
手短に挨拶を済ませたような気がする。


特別なような、
いつも通りなような。
ご無沙汰だったので、彼に誘われることはもうないんじゃないかと思っていたのだが、
今年もこうやってズルズル引きずられて過ごすんだなと、なんとなく確信した。



私らしい新年の始まりであった。

×

非ログインユーザーとして返信する