せいせいかつ日記

大きな声では言えないような話をします。

姫初⑤

その後で、
でも俺そろそろネタ切れだなぁ、
と彼は夢から覚めたように言った。


確かに彼がいつもやってくれるようなことはひと通り終わった。
時間にしてみればまだそんなに経ってはいないが、
下に触れないというのが選択肢の幅を狭めているのだ。
彼は同じところをいつまでもねちっこく触ってるタイプではないのでそろそろ次に移りたい頃合いだろう。


私はというと、
今日ははじめから口に出してもらって帰るつもりだったのでそのタイミングを計っていた。


彼の場合、
出したら寝る。


これはすなわち、この場がお開きになることを指す。
約束の時間まではまだ1時間以上あるので、もう少し粘りたいところなのだが
彼が疲れてしまってはやむを得ない。


私が口でしようか?
と提案すると、
してほしいけどその前にトイレ行きたい
と言って起き上がった。
それから
でもトイレ行ったあと咥えたりしたくないよね?
と聞いた。


この質問何回目?
私は全く構わないといつも言ってるんだけど、こんなに聞くということは
頑なに嫌がる知り合いが近いところにいるということなのか?()


前もそんなこと言ってたね〜、私は全然気にしないよ!
そんなに聞くのは自分だったら嫌だなってこと?
私がそう聞くと、
いや、特に深い意味はないけど…
と尻すぼみになって、それから半裸のままトイレに向かった。


そのまま行ったらさすがに寒かろうて。
なんで何も着ないんだ。
そう思いながら私も服を着るでもなく静かに火を眺めた。


程なくして彼が帰ってきたので、
私もついでに済ませようと腰を上げた。
震えながらストーブの前に座り込む彼を尻目に
私は寒いから服着ていくからね〜、
と主張して脱ぎ散らかした衣類を漁る。
すると彼は
俺の貸してあげる、
と言って私にさっきまで着ていたパーカーを着せた。
ん?なぜ?


着る前から分かりきっているが、彼のパーカーはブカブカで、
持て余した袖がぶら下がっている。
あっという間に着せられ、正しい反応の仕方が分からなかった。


彼も特にコメントしないので、とりあえずトイレに向かう。
ぱたぱたと階段を降りると、パーカーから彼のにおいがした。


これ、彼シャツならぬ彼パーカーじゃん


ふとそんなワードが浮かんで急に楽しくなった。
足取り軽やかに部屋に戻って、
これめちゃめちゃ良いにおいするよ〜
と機嫌良くかいで見せた。
すると彼は全体を見るように目線を移動したあと
服の上から少しだけ体を撫でて
もう回収〜
と言って脱がせた。
なんか言えよ。


特に何という感想もなくあっという間に取り上げられてしまったが、
着てきた服が手の届くところにあったのにわざわざ貸したのは自分のを着せたかったからだよな、
と一人で結論づけて愉快な気持ちになった。


彼はまた私の胸を柔く揉んで
エロい体になったなー、
と繰り返し言う。
それから
私とすると中がめちゃめちゃ気持ちいいんだよなぁ
と続けた。
よく中褒めてくれるけど、それは他の人と比較してもそう?
私はなんとなく相性が良いような気がしてるんだけど、
としばしば思っていた疑問を投げかけると、
うーん、どうだろう
前の人ともだいぶ時間が空いてるから比較とかできないなー
となんとなく有耶無耶にされた。
私は本気で中の相性は良い方なのかなと思っていたのだが、案外強い共感を示す反応はなかったのでこれ以上言及しなかった。


その代わり時間が空いてるというところには
私、何も信じてないからな、
としっかり反応した。



「彼女今はいないの?」


「なんで?笑
いないよ〜」


「どうだかな、
信じてないからな。
してないとか言うのも信じてないから。」


「そういやキスマーク付いてたことあったな笑」


何も面白くねぇよ、ぶっ飛ばすぞ。


そっちはしてないの?
と振られ、なんと答えるか一瞬考えたが、
してないねー
と答えた。
別に私は隠す必要もないんだけど。
私ばっかりぺらぺら喋るのもなんだか癪な気がした。
だけど、私の迷いを読み取ったのか
ほんとに?嘘付いてたら怒るよ、
と言って乳首を強く抓った。
いきなり力技に出るな、幼稚園児か。


私も乳首抓るくらいすれば吐くのか?という思いがよぎったが、
とりあえずここは白を切って場を凌いだ。


信じてないからな、という私の発言に対しても
彼女についても
ふわっと否定するくらいで今までのように強くは反論してこない。
なんならヘラヘラ笑ってどちらか分からないような態度を取っている。
まあ私がやってるのはかまかけでもなんでもなく事実に基づいた質問だからな。


私とは騎乗位ばっかだけど、他の子とは別の体位はしてるの?
そう聞くと
普通にするよ、
そういやyukiとは騎乗位が多いね
とあっさり答えた。


いや多いとかいうレベルじゃないんだけど…。
他の子とはちゃんとしてるという事実に引っかかったが、
まあやっぱそうだよな、
と落ち着いて返事をした。


私が舐められてるとか思いたくないけど、
私は練習台で良いからありのままが見たいと気持ちでこういう関係になった。
そこらへんはもう仕方ない。
今になって思えば彼は初回から童貞じゃなかったから私が練習台になる意味はよく分からんけどな??


私とは正常位1回しかしたことないじゃん、
またしたいなぁ、
と言うと
多分前よりは上手くなったと思う、
と言った。
そんな話をしながら布越しに彼の膨らみを腹でさすっていると、
そっちもそういうの上手くなってるよな、
と間を空けて付け足した。


彼はこっちが攻めると基本抵抗する。
特に初めてしたときなんかは結構力づくで止められたりして、
私はなんとなくこちらから動けずにいた。
とは言っても回を重ねるごとに彼の抵抗も弱くなってきて、
私も少しは好き勝手動けるようになってきた。


その旨を伝えると、
じゃあ好きにして良いよ、はい
と言ってだらんとベッドに伸びた。
急に緊張するからやめてそれ。


とりあえず首筋に舌を這わせ
それから耳に軽く歯を立ててみる。
好きにしろと言ったくせに彼は一瞬私を押しのけるような動きをしたが、
また再び力を抜いてされるがままになった。
反射的に抵抗してしまうのだろうか。


時折体をびくつかせ、
ん…っ
と喉奥から声を漏らす。
普通に良さそうだな。
胸を舐めると私に触れる手に力がこもった。
そうしていると彼は少し笑みを浮かべてから
攻めるのが上手な子としたら楽しいなと思う、
みたいなことを言った。
何故かニヤニヤしてるのはなんとなくその話をするのが後ろめたいからか?


他の人としたときに感じたことをこうやって自分から口にするのはあまりない。
今日はたくさん質問をしたので、オープンになっているのかもしれない。
攻め上手な女が過去にいたという話は正直死ぬほどどうでも良かったが、
私にほとんど攻めさせない彼が
攻め上手な相手だと楽しい
と言い出したことに驚いた。
私はどうしたら良かったんだろう。
下手くそだから拒絶されてたのか、拒絶されても続けないといけないやつだったのか…。
もっと好きにして良かったんだろうなぁ。



彼の一挙一動一言一句に気持ちを揺さぶられる。


こいつと会うと情緒不安定になるからほんとにやだ。

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